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2008年2月 「従台車(1)」



従台車の台枠は前後が分割されており、間を軸箱が接続しているが、鋳物は前後一体とした。横に渡した梁は、木型の補強のためのものである。組み立て時は、見切り面が上になる。台枠の後端には復元装置と接続するブラケットがあり、実物では台枠と一体鋳造されているが、鋳造がややこしくなるので別部品とした。



軸箱は複雑な形状でそのままでは鋳造が難しいので、台枠への取り付け面を境界として表と裏と別の鋳物にした。さらに外側のフランジ部分も鋳造困難なので、フランジと接続する油受けと一体にした。油受けの外にもフタを取り付けるフランジがあるが、これも鋳造困難なので、レーザ加工の別部品とした。ここにレーザ加工のフタが付く。



まず内側の軸箱から加工する。四爪チャックで表裏の平行面を仕上げて、ブッシュを入れる穴を中繰りで仕上げた。



外側の軸箱も同様に、四爪チャックで表裏を仕上げる。中央の穴は、ヤスリでバリを取っただけ。



内外の軸箱を位置決めしてクランプし、まとめて固定穴を開ける。まず3.3mmのドリルで内外をまとめて掘り、上の内側軸箱だけ4mmに拡大し、さらにボルトのヘッドを埋める段差穴を8mmエンドミルで開ける。ここでクランプを外し、内側軸箱だけを取る。



残った外側軸箱にタップを立て、さらに台枠固定穴、油受け固定ネジ穴を開ける。ここまでの加工で穴位置はすべてステージのXY座標で出した。



内外軸箱をネジで固定し、まとめて上下面の加工をする。上の摺動面は完全にツライチとなり、以後の組立の基準面となる。仕上げ高さは、ブッシュを入れる穴の高さから出した。



ブッシュは砲金丸棒から作った。左右まとめて内径外径を同心円に加工し、順次突っ切って、個別に端部を仕上げる。この時点ではまだブッシュは軸箱に接着しない。



台枠中央の補強部分を帯鋸で切断し、先端のピボット軸の穴を開けて、穴周囲の上下面を仕上げる。これをフライス盤にセットして、軸箱取り付け面を加工するのだが、大きすぎてステージに収まらない。ステージと垂直に固定するため、写真のようにフライス盤ステージに金尺を正確に垂直に固定し、ピボット穴に丸棒を通して金尺に突き当て、さらに水平に固定した別の金尺を使って、左右の距離を揃えた。基準点3点を決めて嵩上げクランプし、この状態で、軸箱取り付け面をエンドミルの側面カットで仕上げる。



いったん軸箱の内外を分解し、外側軸箱を台枠上に位置決めする。さきほどの嵩上げの高さは、軸箱が規定の高さになるように選ばれている。ここでも前後位置を出すのに金尺を使った。瞬間接着剤でロックして、クランプで固定した。



外側軸箱の固定穴を台枠に移し開ける。M4ボルトナットで固定するつもりなので、そのまま4mmを貫通させた。



台枠の前後を切り離して内側軸箱が来る部分を切り取り、再び組み立てた軸箱を前後台枠に取り付ける。軸箱のブッシュは完全固定となるので、組み立てで精度を出さないと、軸が回らなくなる。穴を移し開けた時の位置精度を再現するため、前部台枠への取り付け穴5個のうち、内側の2個にロールピンを打ち込んだ。残りの穴をボルトナットで固定する。ブッシュはまだ入れてあるだけ。



左右の軸箱にブッシュを接着する際は、丸棒を通して、芯を出した状態にする。接着にはロックタイト603を用いた。乾燥後も丸棒が軽く回ることを確認する。



後部台枠に、復元装置のブラケット鋳物と押し棒を取り付ける。ブラケットと台枠それぞれの取り付け面は、エンドミルで平面加工している。押し棒はイコライザのバネ釣軸と同じ形状で、作製方法も同じである。



ピボット穴にも砲金のブッシュを接着した。なくてもいいのだが、上下のスペーサーの代わりとして、あえて入れたのである。実機にならって、穴のサイズをピボット軸より5%くらい大きくした。従台車の前後左右の傾きを許すためである。


従輪の塗装をする段になって、ふと考えた。蒸機の黒塗装は、全体を同じ色調に揃えなければならない。先輪には耐熱塗料を使用したので、このままいけば機関車全体を耐熱塗料で塗らなければならない。問題は焼き付けである。C53の巨大な部品を、500Wの小さなヒーターで焼き付けようとすると、膨大な時間を要する。たとえば動輪6枚の表裏全面を焼き付けるためには、60回焼かなければならない。機関車全体となると、焼き付けだけで半年くらいかかるだろう。これは現実的ではない。耐熱塗料に匹敵する強度があり、室温硬化できるものはないのか? ということで複数の経験者から勧められたのが、ウレタン塗料である。焼き付け塗膜に劣らない付着力が得られ、仕上がりも美しく、煙室の高温にも耐えられるという。


ウレタン塗料は、使用前に都度、混合しなければならない。特に、半艶の黒を塗ろうとすると、黒ベース剤、硬化剤、フラットベース、シンナーの4液を決まった比率で混ぜて使わなければならない。ロックペイント社のものを入手して試してみたが、混合が煩わしい上に、常に攪拌しないと艶が一定にならない。さらに大型部品に塗るためには、スプレーガンと大型のコンプレッサも必要になる。もっと手軽に使えるウレタン塗料としては、二液混合のエアゾールタイプがある。使用前に内部に封印された硬化剤を外から操作して混合するというもので、吹きつけそのものは耐熱ペイントと同じである。ただし、いったん混合すると、24時間以内に使い切らなければならない。入手したのは、デイトナ社の「耐ガソリンペイント・つや消しブラック」(イサム塗料の「エアーウレタン」と同等)。これなら手軽に使える。



金属板に塗装して比較してみた。向かって左がソフト99の耐熱塗料で、右がデイトナのウレタン塗料。艶の程度はほぼ同じだったが、やはり耐熱塗料は黒の発色が悪い。煤けた感じは出るものの、C53には似つかわしくない。付着力に関しては、両者ほぼ同等のようである。あと、Williamではネジ用ロックタイト(222)による塗膜の腐食に悩まされたが、ウレタン塗料は腐食されないようである。ということで、C53の塗装はエアゾール式のウレタン塗料を使うことにした。



塗料を変更するなら先輪も塗り直しである。まず接着した車輪を抜かなければならない。ギアプーラーを車輪にセットして、軸を締めて力を加えた状態で、車輪の裏から、軸と車輪をバーナーで同時に加熱した。接着剤が緩んでじわじわと軸が下がり始めたら火を止め、あとは軸を押し込んで抜く。加熱により車輪の磨き出しの一部が青く変色したので、そこは再び磨き出した。残った接着剤は、サンドペーパーで削り落とした。古い塗装は、シンナーにしばらく漬け込んだ後にワイヤブラシでこすって落とした。アセトンで脱脂して、従輪とあわせて再塗装する。


今月はとりあえずここまで。


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