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2021年7月 「ボイラー修理(2)」



今回は三連休を利用して三日連続で作業を行った。内火室の修理から開始。健全な部分の損傷を防ぐため、内火室管板のすぐ下を塞ぐ遮蔽板と、焚口の表裏を守る円盤状の遮蔽板を用意して取り付けた。材料はステンレスが好ましいが、厚板を用意するのが大変なので、銅の余剰材を使用した。



まずプロパンバーナーでやろうとしたが、使用している大型火口で火室内部に吹き込むと、酸欠で失火してしまう。火室に入れられる小型の火口だと、銀ロウ付け温度までとても加熱できない。ということで、酸欠の心配のないプロパン酸素を使用した。局所的な温度上昇を避けるため、炎を動かしながら内火室全体を温め、フラックスが溶けて流れたところで集中砲火で銀ロウを溶かした。



第4回テストを実施。ハンドポンプを接続し、始めて加圧をした。しかし上げられるのは約0.5MPaまでで、漏れのためにすぐ下がってしまう。内火室後板の右側裾、すなわち先ほど修理した部分の下方から漏れている。そして右側サイドステイの内側が2本、外側が2本漏れている。内外の漏れ箇所は一致していない。外側のうち1本は水鉄砲のように水が線になって吹き出している。とりあえず無視して、内火室の漏れ止めに集中する。



内火室後板の修理を実施。今度は継ぎ目の新たな漏れを防ぐため、漏れ位置を中心に、継ぎ目の広い範囲に銀ロウを流した。ボイラーの後部を下にして立てて修理したが、サイドステイの漏れ修理は先送り。



第5回テストを実施。ここで0.8MPaまで加圧できたが、内火室のサイドステイは右が3本、左が1本漏れている。そして新たな漏れ位置として、右側の大煙管の上部からの漏れが発見された。前回のテストでは全く漏れてなかった位置であり、モグラ叩きの様相を呈してきた。




漏れ箇所の修理後、第6回テストを実施。1.0MPaまで加圧。右側の大煙管の漏れは止まったが、今度は左側の大煙管から漏れ出した。そしてそのすぐ下の小煙管も漏れている。さらにその近傍のリベットからも漏れている。サイドステイは左側の先ほどとは別なところから2か所漏れている。



まず大煙管、小煙管、そしてその近くのリベットを修理したが、ここで酸素ボンベの酸素がなくなり、今回は内火室の修理は断念した。



第7回テスト。煙管の漏れは止まったが、今度は管板と内ボイラー天板の間の継ぎ目から漏れが発生。さらに煙管の下のフロントステイからも漏れている。そしてサイドステイは右側が6か所、左側が3か所と、大幅に漏れ箇所が増えている。これ以上個別に対応しても悪化するばかりであり、究極の対策として、次回は、内火室のすべての銀ロウ付け個所をやり直すことを決めた。



残りの時間はプロパンバーナーを使って、放置していた外火室周辺の漏れ修理を実施した。



外火室後板を修理する際に、耐熱ジェルというものを使ってみた。先に接合した場所などに塗っておけば、炎が当たっても温度上昇を防ぐことが出来る。これを外火室後板の周囲、健全なブッシュの周囲にたっぷり塗って作業をしてみた。しかしこれもセラミックシートと同じ問題があり、バーナーの熱がジェルに奪われて、肝心の場所が銀ロウ付け温度まで上昇してくれない。結局、修復途中でジェルをそぎ落として作業を続行した。



修理後、第8回のテストを実施。右側サイドステイ外側の最上段の7本中5本も漏れている。0.8MPaまで圧を掛けると、あちこちから水が線になって吹き出す。よく見ると、右側最上段のサイドステイの突出が、他の場所より低くなっているではないか。加熱で外ボイラーが変形してサイドステイがどんどん引っ込んでる様子。サイドステイは先端にロウを流すための段差加工をしているので、先端が沈み込むと、隙間が増えて漏れが常態化してしまう。さらにさきほどジェルで失敗した外火室後板は、あちこちのブッシュから水が漏れ出している。ここで時間切れ。三連休は不発に終わった。



以後、テストにはS氏所有の試験用ハンドポンプをお借りし、それに接続できる継手を作製した。大型ハンドポンプに圧力計、その前後にストップ弁、さらに圧抜き弁まで備えた本格的なもので、これで随分とテストが楽になる。



酸素ボンベを手配してもらい、一週間後に修理を再開した。内火室の前後左右で4回に分けて、すべての煙管、ステイ、そして継ぎ目のすべてに銀ロウを流し直した。詳細は省くが、結果的にはそれでも内火室の漏れを止めることはできず、再びモグラ叩きの状態に戻っただけだった。外火室についても、問題の右側はすべてのサイドステイに銀ロウを流し直したが、最上段は、いくら修理しても漏れを止められない状態となった。圧力テストは第10回に達したが、改善が見られず、いったん修理を中止し、方策を立て直すことにした。


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