2005年7月 「完成」


レタリング用具
黒い車体には白のレタリングがよく似合う。そこで、側板と空気溜めに適当な白文字を入れることにした。シルクスクリーン印刷の手法を使って、というと高級に聞こえるが、使ったのはプリントゴッコの「CDマスター」である(写真左)。スクリーンの1種だが、露光・現像といった製版作業が不要で、熱転写プリンターで直接製版ができる。熱転写プリンターは市場からほとんど姿を消しており、オークションで中古のアルプスMD2000Jを入手した。CDマスター用の設定があり、鏡像印刷もできる。文字の作成はMS-WORDでそれらしいフォントを選び、図形と組み合わせて仕上げた。インクはこれもプリントゴッコ用のハイメッシュインクを用いた(写真中)。スクリーン上でインクを伸ばすスキージーというヘラは、プラ製の安価なものを切断して使用した(写真右)。


側板への印刷
製版(印刷)したスクリーンをボディの側面に固定して印刷する。フレーム裏に段ボールを貼り、スクリーンが数ミリ浮いた状態にして、クランプでボディに固定する。ここにインクを盛り、スキージーで押し付けながら拡げると印刷される。事前にテスト材で試してみたが、黒地に白なので、厚塗りしないと色が薄くなってしまう。塗料を押し込むようにスキージーをゆっくり動かすと良い結果が得られた。もし失敗した場合は、ただちにアルコールで拭き取り、黒塗料を軽く吹きつけて焼きつければ、跡形なく消すことができる。実際、ここで1回失敗してやり直した。


空気溜めへの印刷
空気溜めは曲面なので、スクリーンを浮かせることができない。マスキングテープで1辺を固定し、反対側を親指で押さえてスクリーンをピンと張った状態で印刷した。スクリーンを取る時は、ずれないように静かに浮かせて取る。印刷途中でスクリーンが浮き上がると、裏に回り込んでしまうので注意が必要である。ここもまた1回だけ失敗した。


印刷終了
インクは紙用であり、自然乾燥では密着性が悪かったが、120度くらいで1時間焼き付けると、爪で引っかいたくらいでは落ちない強度となった。耐熱塗料ではないので、焼き付け温度が高すぎると黄ばんでしまうようである。ちなみにレタリングの内容は、この模型の完成日時と場所、そして重量である。


パターン印刷
続いてナンバープレートと社名板の自作を試みた。材料は1.5mmの真鍮板である。パターンの形成法は上の印刷と全く同じで、今度は真鍮板に直接印刷する。外形を糸のこで切り取るための線もパターニングした。真鍮板の周囲と裏面を、エッチングされないようにテープで保護しておく。エッチング液は処理能力がわずかなので、エッチング面積は必要最小限とする。写真上は、紙にパターンを鏡像印刷したもの。CDマスターの製版は裏からになるので、鏡像印刷の必要がある。


エッチング
エッチング液は塩化第二鉄溶液で、「サンハヤト」のプリント基板用200ccを用いた(廃液処理剤付き)。エッチング面を上に向けて容器に入れるが、片面だけマスキングした小板も入れ、この厚さでエッチング深さを確認する。車台番号は0.2mm、社名板は0.1mmエッチングした。時々、容器をゆすって液をかくはんする。0.2mm掘るのに、室温で2時間半を要した。エッチング液の使用後は、必ず廃液処理をしてから廃棄しなければならない。
今回使用したインクは、エッチングのマスクとしては弱いようで、マスクされた領域の下に微少なピンホールが発生した。完璧なエッチングを望むなら、インクはもっと最適のものを選んだ方が良いだろう。

煙室扉への取り付け
エッチングが終わった真鍮板は、切り取り線にそって糸ノコで切り取り、周囲をヤスリで仕上げ、裏面にエンドミルで深さ0.5mmの丸穴を掘り、ここにフランジ付きのスタッドを銀ロウ付けした。エンドミルで掘った止まり穴は、中央部が0.1mmほど盛り上がるので、フランジの正面もこれにあわせて微妙にテーパーをつける必要があった。写真は煙室扉用でフランジを厚くしているが、側板用はフランジが裏面とツライチになっている。煙室扉にはさらにスタッド2本を立ててこれで銘板の上端を支え、プレートを鉛直に保つようにした。


完成プレート
塗装は、まず表面にスプレー塗装をして焼き付ける。ナンバープレートは赤で、社名板は黒で塗装した。煙室用のナンバープレートは、さらに裏面を黒く塗った。続いて、定盤上にサンドペーパーを置いて、文字と枠を磨き出し、クリアを吹いた。クリア塗装をすると、真鍮磨き出しの美しさは多少とも失われるが、これをやっておかないと、すぐに曇って黒くなる。



総組み立てを実施。サイドタンクはタンク内の左右6カ所、ランボードまで貫通する穴を開け、シール剤を塗ったワッシャを介して、ボルト&ナットで締め付けた。さらに後端部をランボード上のブロックにネジ止めした。プレート類は裏面からナットで固定したが、タンク部はシール剤で、キャブ横はロックタイトで補強した。煙室扉のプレートのみ、回り止めとして裏から1mmのピンを埋め込んだ。最後に、サイドタンクの天板を取り付ける。

ついに完成!



苦節6年半、ついに完成した ・・・・ 次号完結?

(終)


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