1999年10月 「内火室」


外ボイラーがひととおり形になったので、内ボイラーに取りかかる。

【内火室前後板の穴開け】

内火室管板穴開け内火室管板に煙管の穴を、内火室後板には焚き口の穴を開ける。
煙管はわずかだが前が高くなるように傾斜が付いている。
内火室管板の穴を傾けて開けておけば、固いはめ合いで組み立てた時に、
勝手に煙管が傾いてくれる。
まず傾いた土台を、厚さ9mmの鋼板から旋盤で削り出し、
これに火室管板を固定し、
土台ごと面板上で次々と芯出しして、心押し台のドリルで穴を開けていく。
大煙管穴は直径が大きいので、中グリバイトで仕上げる。
写真の自動送り用ギアは、面板のバランスを取るための重り。

内火室後板の焚き口の穴は垂直なので、中グリバイトで穴を開けるだけである。
穴開けの終わった両プレートは、外火室後板と同様、型板治具を用いて外形加工しておく。

内火室前後板


【煙管の加工】
ここで大小煙管を用意する。
煙管大煙管はφ22.4、小煙管はφ12の銅管を使用した。
内火室管板に銀ロウ付けする時に抜け落ちないように、
後端は0.1mmの段差加工をする。
内火室管板の穴と現物合わせで、固いはめ合いになるように削る。
銅は柔らかいのではめ合いの調整が難しく、
バイトをシャープに研ぎ、遅い回転で削る。
削り過ぎた時にそこだけ切断してやり直せるように、銅管は長めに切り出しておく。
煙室管板に入る前端については、段差加工はしないが、
組み立てやすいように先端をテーパーに削る。
銅は加工でバリが出やすい。前後とも内周を面取りしてバリを取り除いておく。


【焚き口輪】
焚き口輪加工前焚き口輪は、外火室後板と内火室後板をつなぐ太くて短いパイプだが、
径の大きい肉厚の銅管は入手が難しく、銅板を丸めて作った。
銀ロウ付けに失敗して隙間が開いてしまい、作り直した。
(写真左が失敗例)。

これに桜材から作った円盤を叩き込んで、内径を真円に仕上げ、
その桜板をヤトイにして旋盤で両端を段差加工するが、
前は内火室後板の穴に固く入るように、
後ろは外火室後板の穴に緩く入るように調整する。

焚き口輪加工焚き口輪完成

焚き口銀ロウ付けできあがった焚き口輪は、ここで内火室後板に銀ロウ付けする。
運転席から見て継ぎ目が見えないように、継ぎ目を上に向けて付ける。
このような固いはめ合いの銀ロウ付けで、
銀ロウをきれいに裏まで回すためには、

(1)穴の側面にヤスリで傷を入れ、銀ロウの通路を作る
(2)フラックスはまわりに拡がらないように塗る
 (拡がると、溶けた銀ロウはそちらに流れてしまう)
(3)銀ロウが溶けたら、温度を一定に保ち、
 盛り上がった銀ロウが継ぎ目にしみ込むまで待つ。

【内火室板】
内火室の前後妻板をつなぐのが内火室板である。
2.5mm厚の銅板から成型するが、外火室より形が複雑なので、難しい。

まず銅板の切り出し方法について改めて説明する。
糸ノコで切るのは大変だし、私の腕ではまっすぐに切る自信がないので、
仕上げしろを0.5mmくらい残して、金ノコでザクザクと切り出し、ヤスリで仕上げる。
まっすぐな平鋼(定盤で確認)をケガキ線に合わせてクランプし、平鋼をガイドにして削る。
あらかじめ平鋼に青ニスを塗っておき、青ニスが消えるまで削れば、断面は一直線に仕上がる(写真)。

切り出しエッジ仕上げ

続いて成型だが、いろいろ方法を検討し、以下の手順で行った。

(1)直径20cmのズンドウナベを型にして、頂部と側部の大径Rをまとめて曲げる(写真左)
(2)平鋼とアングルを組み合わせて曲げる位置の前後を挟み、くびれ部分を曲げる(写真中)
(3)φ20丸棒とアングル材で板を挟み、両端にネジ棒を通してナットで締め付け、
 肩の部分を曲げる(写真右)。ずれないように板と丸棒にφ1.6の貫通ピンを通したが、
 この穴はそのままリベット用の穴とする。

内火室曲げ1内火室曲げ2内火室曲げ3


内火室成型以上の方法だけでは正確な形にはならないので、
また桜板から型板を作り、
これを中に入れて周囲からハンマーで叩いて、正確な形に成型した。
終わったら、前後妻板をM1.6ビスナットで仮組みし、
追加で板金して隙間を無くす。
板金時は必ず丸棒などで裏打ちしておかないと、
フランジ部分が変形してしまうので注意。

内火室仮組み


【運転会】

10月10日に「一本松ミニ鉄道公園」で久々の運転会があった。
関西のライブ同好会の人達も参加する予定だったらしいが、都合で来れなくなり、
地元だけの小規模な運転会になった。
今回は、一本松同好会の木村氏所有のOSコッペルを丸一日借りて、
蒸気上げから全部やることになった。
無煙炭があるのだが、練習のため敢えて有煙炭で運転することにした。

運転会1一本松では、園内の食堂の使用ずみ割り箸を火種にして
火入れをしている。
電動の通風器を煙突に差して強制排気し、
割り箸の束を二つ折りにして火室に突っ込み、
カセットトーチで点火する。
燃えさかったら石炭を投入し、さらにトーチで加熱する。
無煙炭より有煙炭の方が着火しやすく、
煙と匂いで着火状態も良くわかるので、
無煙炭で運転する場合でも、
火入れは有煙炭でやる方が楽である。

石炭に着火したら、あとは石炭を追加しながら、圧が上がるのを待ち、
2kgf/cm2以上になったら、通風器を外して自力でブロアーをかける。
さらに圧を上げ、コッペルの場合4kgf/cm2で安全弁が吹き、運転準備完了。
引き込み線で少し前後に動かして、本線に入る。
運転会2
初めて有煙炭で運転したが、とにかく煙と煤煙がひどい。
煙が目にしみて前が良く見えない。
顔にも衣服にも煤煙が降り注ぐ。
高温の煤煙が顔に当たって痛い。
化繊の服だと溶けるらしい。

有煙炭なので、多めに投入しないといけないと思っていたが、
気温が高いせいか、機関車が優秀なのか、やたら調子が良く、
いつものペースで投炭していても、安全弁は吹きっぱなしで、
タンクの水がどんどん減っていく。
石炭をセーブしてバランスを取る。
途中、調子に乗って飛ばしすぎ、危ないと注意された。
スケール速度が安全速度である。


運転会3連休ということで公園内は家族連れでにぎわっている。
途中から客扱い。
公園所有の500系のぞみと併走する。
子供は500系に乗りたがるが、お父さんはSLに乗りたがる。
最大で大人4人+子供2人を牽いたが、
発車時は加減弁全開で煙をもくもくと吐き、
ブラスト音も迫力が出る。
やはり重荷を牽かないとおもしろくない。


この日は、一本松同好会の廣瀬氏の5インチDタンクがデビュー。
オレンジ色のフリーランスで、部品の一部はセントラル製らしいが、
35kgの大型ベルペアボイラーを自作、搭載しており、パワフルである。
前日からいろいろ調整して、連続運転できるようになった様子。

4時間ほど運転したところで圧が上がらなくなる。
煙管がほどんど詰まっていて、ブロアーが効いてない。
本日の運転は終了となった。
電動ドリルの先にワイヤブラシを付けたもので煙管を掃除する。
火室に残った石炭は、通風器で強制排気して燃やし尽くす。
火が消えたら火格子と灰箱の燃えカスを取り除き、
タンクの水とボイラーの水を抜く。
機材庫のピット内で車体を掃除して、運搬台に格納して終了。

洗面所で顔を洗う。煤煙は石鹸で洗わないと落ちない。
ザラザラとした感覚が気持ち悪い。
帽子をかぶらずに運転したので、髪の毛もゴワゴワである。
家に帰って風呂で全身を洗っても、まだ石炭の匂いが鼻に残っていた。

【ライブの操作性】

OSコッペルは5インチでもコンパクトであり、
パワーもそれなりにあるので、たいへん扱いやすい。
やや値が張るが、初心者にもお勧めできる。

以前、英国製サドルタンク機を運転したときも感じたが、
軽便は同じゲージでも縮尺が大きくなるので、
コンパクトなわりにはキャブが広くゆったりしている。
特に切妻型は後ろもフルオープンにできるので、大変運転しやすく、
まさにライブにはうってつけである。
軽便ファンにはライブをお勧めしたい。

逆に扱いにくいのが3インチ半の大型テンダー機であり、
まず、身を乗り出さないとキャブまで手が届かない。
そのため加減弁を棒などで延長してリモコン操作にする場合が多い。
人によっては通風弁や逆転機までリモコンにし、あやつり人形師のごとく運転している。
しかし投炭だけはどうしようもない。
無理な前屈姿勢を強いられ、しかもテンダーが邪魔で非常にやりづらい。
タンク機でもコールバンカーのデザインによっては投炭がやりにくくなる。
スタイルを犠牲にして屋根や妻板などを大きく切り取ってしまえば、多少は楽になる。
形にこだわる人は、屋根を取り外し式にしたり、はね上げ式にしたりして、
極力、実機のシルエットを保とうとする。
展示と運転で形態を分けるという考え方だが、ライブを床の間に飾る人は少なく、
屋根は結局、保管時のホコリ除けでしかなくなる。
5インチであればテンダー乗車できるので、操作はずっと楽になるが、
今度はシートとステップがテンダーのシルエットを崩すので、
またまた取り外し式にしないといけない。
ステップなど目立たぬように細くしたいところだが、
細いと足もとが不安定になり、長時間運転すると足が疲れてしまう。
この点、大胆にもバイク用のステップを付けたOSスーパー6は、
たいへん座り心地が良い。
いずれにしろ形と機能の両立は難しいものである。


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