ライブスチームの構造


ライブスチームは「ミニSL」などと呼ばれていますが、その名のとおり、小さいながらも本物のSLと全く同じ原理で動いています。火室で石炭をたき、ボイラーの湯をわかしてそこから高圧の蒸気を取り出し、それでピストンを動かして車輪を回転させるのです。

ボイラー

本物のボイラーは鉄でできていますが、ライブスチームのボイラーは銅でできています。銅は熱伝導がよくてさびにくく、模型用ボイラーには最適です。ボイラー内部は水で満たされており、水量は水面計で監視されています。さらにその内側には火室がもうけられ、この中で石炭が燃やされ、発生した熱が水の加熱に使われます。燃焼ガスは煙管の中を通って煙室に導かれ、煙突から排気されますが、ガスの熱も水の加熱に使われます。加熱された水はやがて熱湯となり、蒸気が発生しますが、密閉されているために蒸気の圧力はどんどん上昇していきます。ライブスチームの場合、蒸気の圧力は大気圧の4〜6倍で使われます。圧力がこれ以上になると、安全弁が吹いて蒸気を大気中に逃がします。圧力は常に圧力計で監視されています。ボイラーは、常用圧力の2倍以上の圧力で耐圧テストをして、合格したものでなければ、使うことはできません。

ブロアー

石炭を燃えやすくするためには空気(酸素)を送り込んでやる必要があり、そのための装置がブロアーです。煙室の下から煙突に向かって蒸気を強く吹き出すことによって、火室の燃焼ガスが煙管を通って煙突から抜ける流れを生み出します。これにより火室には、下の火格子から空気が吸い込まれるわけです。走っているときはシリンダーの排気がブロアーに使われます。これをブラストといいます。SLのシュッシュッという音がブラストの音です。停止中はボイラー内部の蒸気をそのまま使います。これをドラフトといいます。この装置の発明により、蒸気機関車の性能は飛躍的に向上しました。

シリンダー

シリンダー内にはピストンがあり、それがクロスヘッドとメインロッドで動輪とつながっています。動輪どうしはサイドロッドでつながっていて連動するようになっています。シリンダーに蒸気を送り込むと、ピストンが前後に動き、動輪は回転します。しかしこれだと、メインロッドが伸びきったときに力が伝わりません。そこで左右のメインロッドは4分の1回転だけずらして取り付けられており、片方が伸びきったときには片方が中間位置にいて、どの位置でも力を伝えられるようになっています。子供がSLのまねをするときに左右の手を同時に動かしますが、あれはまちがいで、実際は左右が4分の1回転ずれた状態で回っているのです。

バルブギア

ピストンの前後にタイミングよく蒸気を送り込むためのしくみがバルブギアです。ギアといっても歯車ではなく、ロッドの組み合わせです。動輪などの動きをロッドで取り出して合成し、シリンダー上部にある蒸気室のバルブを動かしています。SL独特の複雑なロッドの動きはこのバルブギアによるものです。ライブスチームでも実物どおりのバルブギアが使われています。


運転室(キャブ)


【水面計】
ボイラーの水量を監視するためのガラス管です。すぐ下に気泡を抜くためのバルブがついています。ボイラーの水位が下がって火室が露出すると、過熱によりボイラーを壊してしまうので要注意です。

【圧力計】
ボイラー内部の蒸気の圧力を監視します。運転中は圧力を一定に保つように石炭の量を調整します。

【焚き口】
石炭を入れる口で、火室につながっています。石炭の燃えぐあいもここからのぞいて確認しますが、あまり頻繁に開けると火室が冷えてしまいます。

【加減弁】
シリンダーに送る蒸気の量を調整します。自動車のアクセルに相当します。

【逆転機】
バルブギアを操作し、前進、後進を切り換えるほか、カットオフの調整をします。カットオフは自動車のギアチェンジに相当しますが、ライブスチームの場合、あまり動かさないことが多いようです。運転中にカットオフの調整をし始めると、運転が急に忙しくなります。

【通風弁】
停止中にブロアーを吹かせるための弁です。走行中はシリンダーからの排気(ブラスト)が効いているので、ここは閉じておきます。

【汽笛弁】
汽笛を鳴らすための弁です。汽笛も蒸気で鳴らします。

【ハンドポンプ】
停止時にボイラーに給水するための手動ポンプです。

【バイパス弁】
軸動給水ポンプの給水量を調整するための弁です。

この他に、重要な装備としてブレーキがあります。ライブスチームはお客さんを大勢乗せると、重量が1トン以上になるので、ブレーキなしで止めることはできません。通常は運転士の乗る乗用台車に、レバー式またはペダル式のブレーキを付けます。
以上の装備は、実物では機関士と機関助士が操作しますが、ライブスチームではひとりで全部操作しないといけないので大変です。なおかつ、運転中は前方注意をおこたってはいけません。


(この記事は、「一本松ライブスチーム同好会」サイト用に作成したコンテンツの、一部を修正したものです)