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2008年4月 「乗用台車の改造」


ライブスチームを始めて10年でやっと車を買い換えた。ワゴン車である。通勤に使える車で、なおかつC53が積めるというのが車種選択の条件だったが、長尺物を積む場合は、ミニバンよりステーションワゴンの方が良い。C53本体の全長は1700mmで、ケースを含めると約1800mmになる。ほとんどのミニバンは、二列目シートまで外さないとこれを積めないが、ワゴンであれば、後列を倒して助手席を前端にずらせば、2メートル近い長尺物を積むことができる。あとはC53を完成させるだけだが、新車が廃車になる前に完成させられるかどうか・・・
とりあえず、これを機会に、短くて不満だった乗用台車を延長することにした。


現状の乗用台車は全長が990mmである。車のトランクに横に積めるサイズとして設計したが、これだと運転士の後ろに子供1人しか乗れない。ボギー式がもったいないというシロモノである。足回りはこれをそのまま流用して、全長を1600mmに延長することにした。そうすれば4人乗れるようになる。内部の水タンクも拡張することにした。



旧作は廃材利用だったが、今回は製作時間短縮のため、DIY店で定尺板から必要サイズに切断してもらった。材料は厚さ15mmのMDF(木質繊維ボード)である。MDFは材質が均一で狂いが少なく、価格も合板より安い。ただし合板より強度は落ちるようである。



本体を、木工用接着剤と木ネジで組み立て、油性アクリルスプレーで塗装した。木ネジはドリルで下穴を開けてからねじ込んだ。MDFは木目がないのでなめらかな仕上がりになるが、水分を吸収しやすく、塗料をどんどん吸い込んでムラになる。何度も塗り重ねないと綺麗に仕上がらない。コバは特にひどく、塗っても塗っても色が付かない。コバだけ油性ニスを塗り直して、上から再び塗装した。安いのでMDFを使ったのに、塗料代を入れるとかえって高くついてしまった。こんなことなら、合板をニスで仕上げれば良かった。



乗客用のステップもMDFを使用。平鋼材4本を横に渡して、この上にネジ止めした。平鋼は黒く塗装し、ボルトで車体から釣って、高低差をつける。



座席もMDFがベースである。裏面両側に角材を貼り付け、本体とはめ合うようにした。まず、クッションとして、風呂用のマットをボードのサイズよりやや大きめに切って接着した。上面の角は、カッターで面取りしておく。



シート地にはビニールレザーの切り売り品を使用した。裏側に折り込んで、タッカーと呼ばれる木工用のホッチキス(写真)で固定する。運転席部分を分割したのは、タンクへの給水時にそこだけ取り外せるようにするためである。




水タンクは百円ショップで買ったCDケースを3個並べたもの。間を25mmの真鍮管で接続した。穴はホールカッターで開け、真鍮管を差し込み、両側にエポキシ接着剤を流した。ケースの材質はポリプロピレンなのでまともに接着できない。水漏れ防止だけが目的である。ケース本体は、シール剤を塗った木ネジで本体底に固定し、フタの周囲を粘着テープで巻いた。フタには空気抜きの小穴を開け、さらに一番前のケースには給水用の大穴も開けた。この穴は、座席裏に貼り付けた発泡スチロールの円盤で塞がれる。水の出口は、中央のタンクの底に開けた。以前のタンクに使っていたニップルをそのまま使用した。タンクの容量は約8リットルで、今までの約5倍になった。



タンクから出た水は、床下を通るビニールホースで機関車に送られる。水路の途中を、プラ製のエルボで直角に曲げている。旧作ではホースだけで取りまわしていたが、途中でホースが折れて水が止まってしまったことがある。前後の台車間隔が拡がったので、ブレーキロッドは長いものを作製した。その他の床下部品はすべて旧作の流用である。



完成した乗用台車。クリームと茶色の塗色は、べつに旧コトデン色を狙ったわけではない。生地に近い色で、高級感のある色にしようとしたら、こういう組み合わせになったのである。総重量は25kg。嫁さんから「手すりがない」というクレームが付いたが、まあそのうち考えたい。




ワゴンの荷室に積んだ状態。後部座席の左3分の1を倒し、ここに乗用台車を積む。右の座席はそのままで機関車を縦積みし、余ったスペースに必要な機材を詰める。この状態で、まだ人間4人が乗ることができる。



WILLIAMのケース(ヤザキのイレクター)をトランクに縦積みするためには、ケース全長を5センチ詰めなければならなかった。梁4本をチューブカッターで切断して短くし、専用の継手で再接続した。レールの余剰も切断。ケース両端のカプラー押さえ部品は、真鍮丸棒でスペーサーを作って、25mmずつ外にオフセットさせた。



「瀬戸大橋20周年記念イベント」に参加。サンポート高松のイベント広場に、一周400メートルの仮設線路が敷かれ、約30輌のライブスチームが二日間で3000人以上の乗客を運んだ。今回の乗用台車は、これに間に合わせるという目的があったのである。



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