2009年1月 「制動装置(3)」
ブレーキロッドとブレーキシリンダーは鋳鉄のアーム(制動腕)で接続されている。ここでシリンダーの上下運動がブレーキの前後運動に変換され、さらにアームの半径比で力が増幅される。そのため、制動腕は巨大で頑強な構造をしている。写真は外側を加工した直後のもの。
制動腕の裏面は、両端で微妙な高低差があり、その間が斜面で接続されている。加工済みの表面を基準にして、まず両端の平行面を加工し、角度をつけて再固定して、斜面部分を仕上げた。
支点軸の穴を開ける。ドリルで肉削ぎをして、16mmのエンドミルを貫通させて仕上げた。穴入口の段差加工も、ちょうど良いサイズのエンドミルがあったのでそれで正面切削した。
長短の両アームにも穴を開け、短アームの裏面には、貫通ボルト固定するためのリブ構造を小径エンドミルで削り出す。さらにU字の鋳物が入るスロット部を加工した。
短い方のアームの穴には、接続ピンを入れる。ピンは、横から貫通するボルトで固定される。アームの穴にピンを入れて両方同時に固定し、ボルトを通す穴をまとめて貫通させる。この後、ピンを切断して全長を仕上げた。ボルトはピンの中心線からずれた位置を貫通している。位置をまちがえたわけではなく、実機がこうなっているのだ。理由はよくわからないが、ピンの強度確保のため、あるいは組み立てをしやすくするためと思われる。このため、まとめて穴を開けないと、ドリル先端が逃げてしまうのである。
制動腕を保持する鋳物(制動軸受鋳物)は、木型の関係で、左右独立の鋳物にした。旋盤の四爪チャックで穴を開け、内側面と底面を仕上げ、軸を固定するボルトを通す穴を開けた。ここのボルト穴も先ほどと同様に芯がずれているので、鋳物と軸と同時にボルト穴を開ける。左右をまとめて加工した。
穴の半分は取りはずし可能な構造になっている。軸に制動腕を付けたまま下から入れられるようにするためである。0.3mmメタルソーで半円部分を切り取った。
軸受鋳物に軸を取り付けた状態。左右のアームは独立して回転しなければならないので、軸は固定でアームだけ回るようになっている。
軸の両端にはフランジが付き、アームが抜けないように保持している。第一第三クランクピンと全く同じ構造で、ここにも緩み防止の二重ボルトが使われている。外側はM10の細目、内側はM4の逆ネジである。
軸受鋳物は主台枠の中間梁のひとつに取り付けられ、制動腕と後端ロッドが砲金製の滑り子(砲金丸棒から削り出し)で接続される。滑り子は後ろからボルトで押され、ここでブレーキの調整がなされる。ボルトは調整後にロックナットで固定される。
軸受鋳物を本体に取り付けると、軸を取り付けるためのナットが入らない(指先が届かない)ことが判明した。制動装置取りはずしの際に、軸ごとはずせないと不便である。もともとM4のボルトナット固定だったが、穴の入口をM5に拡大して、ここで止めることにした。M5ボルトの先端を4mmに加工したものを使う。4つ上の写真と比較してほしい。
制動のリンク機構を垂直に展開するというのは、三気筒独特のものだが、重力でリンク部分が垂れ下がってしまう。対策として、実機ではあちこちをフックで釣り上げている。いずれも取って付けたような構造で、あまりスマートとはいえない。写真は、第一第二制動梁を水平に保つためのL型フック。6x2mmの鋼帯板から作った。底には長穴が開いており、制動梁と半固定される。
上端の輪の部分は、まず端部をアールに削った平鋼を型としてU字に曲げ、さらに裾を万力で締め付けてP型に整形した。
L型フックを保持するためのスタッド。主台枠側面に内側からねじ込み、側面の穴に棒を通して締め付ける。反対側はフックを割ピンで固定するようになっている。
第三制動梁は、丸棒から作った輪で釣られる。2mmのステンレス丸棒を整形して作った。継ぎ目は下にあり、両端を斜めに切断して銀ロウ付けした。これを釣るフックは主台枠を下から貫通し、上を割ピンで固定する。実機では主台枠にねじ込むようになっているが、それだと組み立てが困難になるのでこの構造にした。
こちらはブレーキロッドを釣るためのフック。これも鋼帯板を曲げて作った。実機ではこのフックが主台枠内側にボルトで完全固定されるが、それだと制輪子の横動を稼げない。ボルトを途中までねじ込んで半固定とし、左右に揺れるようにした。反対側からセットビス(イモネジ)をねじ込めば、ボルトを好きな位置で固定できる。
まずは動輪なしで全体を仮組みしてみた。この状態で第二動輪の制輪子が左右に2mmずつ動けるように、各部に充分な遊びを取っている。あとはブレーキシリンダーを作れば、制動装置は完成となる。