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2020年4月 「ボイラー設計」


本体と炭水車の下回りができたところで、いよいよボイラーに着手する。

C53のボイラーは、想定重量が30kg程度になる。自作するには大火力が必要で、閑静な住宅街で作業をするのは難しい。当初は、英国への外注を考えていたのだが、所属クラブJMRCのS氏の作業場をお借りするという前提で、自作することにした。ボイラーの設計については、JMRCのホームページに「模型蒸気機関車ボイラー安全指針」が掲載されており、それに従った。また、米国Live Steam & Outdoor Railroading誌に連載中の、平岡幸三氏のK-27のボイラーも参考にさせていただいた。材料は銅で、ブッシュ類は砲金とする。銅の板厚は、缶胴が2.5mmで底枠が6mm、それ以外は3mmとした。ステイは7mmのリン青銅丸棒を使用し、32mmピッチを基本としている。

以下に側面図を示す。青色が設計したボイラーで、灰色は実機をスケールダウンしたボイラーである。1/8.4のスケールのままでボイラーにすると、5インチの模型用としては大きくなりすぎる。缶胴の直径を短縮し、それに応じて火室の幅も狭くした。全長については、蒸気ドームがボイラーのほぼ前端にあるので、あまり短くすることはできない。結果として、缶胴の先端直径が159mmで、全長が933mmになった。火室の後端は、キャブの窓から見える外火室後板の斜めのシルエットを残したいので、スケールどおりとする。外火室後板の傾きに応じて、火室の下端と前端も傾いており、底枠の断面はどこでも長方形となる。製作を容易にするため、缶胴は前後分割とし、前が細く後ろが太いテレスコーピック(望遠鏡)接続とする。火室部分はさらにその上にかぶさるようになっていて、全体のシルエットがテーパになっているが、これは実機と同じである。以上の前提で、3D-CAD(Fusion360)で詳細設計をした。



スーパーヒーターは使用する前提で、大煙管3本と小煙管12本を用いる。通常のボイラーより煙管が長いということもあり、小煙管は、英国ボイラーのように細いものを多数入れるのではなく、比較的太いものを少数とした。大煙管は外径28.5mm、小煙管は外径16mmである。



内火室管板と喉板は、途中で折れ曲がった形状となり、製作が多少とも厄介になる。英国型はこの構造が多く、製作法として、いったん平板で板金加工をして、フランジ部分にV字の切り込みを入れて曲げているが、それだと切り込み位置から漏れそうで怖いので、最初から折れ曲がった型板で整形するつもりである。内火室後板と外火室後板は平行で、いずれも傾いているので、フランジ加工の際に、左右は直角に、頂部は鈍角にしなければならない。これも型板の加工に工夫が必要である。



喉板は、前半が缶胴に沿う半円のフランジ、後半が火室に沿う平行のフランジで、さらに上部には外火室天板が接合される。そして途中から折れ曲がっており、ボイラー部品の中で最も複雑で、製作、組み立てが難しい部品となる。複数の型板が必要で、それぞれの設計が重要である。



バックヘッドのブッシュのうち、加減弁ブッシュは、挿入する加減弁が缶胴と平行になるので、バックヘッドに対しては傾いていることになる。これはブッシュを傾けて付けるのではなく、ブッシュの形状を工夫することで傾かせる。



内外火室の天板を接続するクラウンステイは、K-27と同じ構造とした。断面がL型の帯板を背中合わせにしてスリットを作り、それを上下に設置して、その間を板で接続するという構造である。ただし、K-27が中央1組なのに対し、大型のC53用は、左右2組とした。



全重量は、3D-CADで計算すると約28kgとなった。銀ロウ付けで完成させるのにどれくらいの火力が必要か。平岡氏のK-27のボイラーは、製作担当の中原氏の手ですでに完成されており、水圧テストも合格している。ボイラー重量は、3D-CADで計算すると約14kgであり、使用されたバーナーの最大火口が、シーベルトの#2944(口径50mm、86kW)である。これを越える火口は、シーベルトだと#2960(口径60mm、114kW)というのがある。国産の新富士バーナーだと、PB-10H(口径100mm、167kW)というのまであり、これなら28kgのボイラーでも楽に加熱できる火力が得られると思われる。ちなみに、一般的な家庭用ガスコンロの火力は4kWで、単純計算でガスコンロ40基分の火力ということになる。



これは、シーベルトと新富士のバーナーについて、口径と火力をグラフ化したものである。特に大口径のものについて、同じ口径だと、新富士よりシーベルトの方が火力が大きい。新富士はシーベルトよりパワーが劣るという話があるようだが、必要な火力を出せる火口を選べば良いだけだろう。さらに銅ボイラーは全体加熱が必要であり、大口径の拡散炎の方が都合が良いように思われる。



バーナーは新富士で揃えることにして、まず初期段階で手頃な火力を得るため、シーベルトの#2944と同等火力のPB-7H(口径60mm、83.7kW)というのを手配した。新富士のバーナーは、減圧弁を使用せず、ガスボンベから直接供給するようになっている。試しに自宅の裏で、一瞬だけ全開で燃焼させてみたが、戦闘機が頭上を通り過ぎたかのような大騒音がして、住宅街ではとても使えないと納得した。



自宅で銀ロウ付けは無理としても、板金のための焼鈍はできるようにしたい。銀ロウ付けには700度が必要だが、焼鈍だけなら400度以上に加熱できれば良い。試しに台所のコンロを使用したが、力不足で、さらに温度が上がると温度センサーが働いてガスが遮断され、連続加熱ができなかった。そこで、業務用の「鋳物コンロ」を手配した。火力は家庭用コンロの2倍強で、高温にも耐えられる構造である。こちらは減圧弁が必要。



これは以前から持っている放射温度計である。測定範囲は550度までだが、焼鈍の温度管理には充分使える。


次回より製作過程を報告するが、銅板を切り出す前に、まず型板の作製からとなる。

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