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2023年5月 「オイルポンプ(1)」


C53の実機のオイルポンプは、左右のランボード上に1機ずつ設置されており、加減リンクからのアームで駆動されている。模型のポンプも、実機のポンプ箱のスケールに収まるサイズで作ることができる。駆動も実機と同様に加減リンクを利用する。


ポンプの断面図を示す。周囲の青色の線が実機のポンプ箱で、ポンプのオイルタンクと二重構造になっている。とりあえず試運転のため内側のポンプ本体のみを準備する。ポンプの方式は、ウイリアムと同じウェークフィールド式を採用した。シリンダーを真空状態にして油を吸い込む方式である。ただし、駆動ホイルの一方向回転は、ラチェット式ではなく、市販のワンウェイクラッチを利用した。
球弁はコイルスプリングで上向き弁座に押さえつけられる。コイルスプリングは0.3mmのSUS304ステンレス鋼線から作製した。旋盤を使って巻いたが、ズボラをして1.8mmドリルをマンドレルとして使った。



スプリングはリン青銅製のカップを介して球弁を押すようになっている。カップには背面の圧抜きのため小穴を開けている。



ポンプのシリンダー部は真鍮六角棒を加工して作った。弁座の加工がやりやすいように、弁座部分で上下分割とした。オイルタンクの底板を挟んで、上部品がタンク内、下部品がタンク外となる。上部品の側面に、オイルを吸い込むための横穴が開けられている。



シリンダーには上からステンレス丸棒のピストンが差し込まれるが、ピストンの上端には、エキセントリック・シーブが収まる矩形のストラップが付いている。ストラップ窓はミリングで仕上げた。窓枠の頂部には、シーブのセットビスを締める六角レンチを通す穴を開けている。




写真は、駆動アームに使用した、直径8mmのワンウェイクラッチである。外周に対して、内周が一方向のみに回転する。外周にアームを取り付けて前後に揺すると、内周に差し込んだ回転軸は一方向に回転する。



アームは2mmの真鍮板から作った。ロータリーテーブルで先端のR加工をした。アームのブッシュ部も真鍮製で、スリット加工をしてアームを差し込み、銀ロウ付けする。




完成したアーム。ブッシュ部の穴にワンウェイクラッチが圧入されている。圧入の締めしろは、ワンウェイクラッチのカタログ指定値に従った。



軸の反対側に円盤状のダイヤルを取り付け、軸を手で回してオイルを送れるようにする。ダイヤルは真鍮丸棒から作り、外周に滑り止めのローレット加工を施した。



ダイヤル中央には角穴が開いており、軸の先端を四角に加工して差し込み、ナットで締め付けて固定される。



エキセントリック・シーブは砲金丸棒から削り出した。旋削でフランジを形成し、偏心穴を開ける。穴はハンドリーマで仕上げた。チャックを手で回しながらヘッドを徐々に下げて通す。シーブはセットビスで回転軸に固定されるが、滑り止めのため、軸の側面にセットビス先端が入るくぼみを設けた。




写真が、本体を除く駆動部品の全部である。上段の中央の二つが、回転軸の軸受と固定ナットだが、軸受にOリングを入れたのは、シールのためではなく、軸に回転抵抗を与えるためである。回転軸の軸受けが軽すぎると、回転軸がアームと連れ回りして往復運動となり、回転できなくなるのだ。軸は直径4mmで、Oリングのつぶししろは0.4mmとした。



オイルタンクは、真鍮板を折り曲げて、高温ハンダ(Comsol)で組み立てたものである。板をコの字に曲げて前面と側面を形成し、そこに裏板と底板を接合している。



完成したオイルポンプ。同じものを左右で2個作製した。エンジンオイルを張って、漏れがないこと、アームを動かしてオイルが送り出されることを確認した。ダイヤルのポンチマークは、ダイヤルの回転数を測る目安として入れた。次回、本体への組み込みと駆動装置を紹介する。


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