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2024年2月 「中間試運転」
試運転は、埼玉県のS氏のレイアウトをお借りして実施した。軌道はOSの仮設線路であり、半径7.5メートル通過確認にうってつけである。四人がかりでケースごと車から降ろし、軌道上でケースから軌道に移動させた。
ケースから軌道への移動には、ハンスレット用のリレーラーを改良したものを使う。ハンスレットでは左右アングルをM6の寸切ネジで接続していたが、強度を上げるためM8に換装した。さらにアングル前端にネジ穴を開けて、左右からボルトで軌道側面を押してセンタリングできるようにした。
ボイラーは、前日に安全弁を外して脱イオン水で満水にしておいたので、そのまま蒸気上げを開始。灯油浸漬木材で着火し、有煙炭に切り替えて圧力上昇を待つ。
C53はボイラー容量が大きい(満水で約12リットル)うえに、火室が広大なので、蒸気上げが大変である。ハンスレットと同じ調子で投炭していても一向に圧が上がらず、思い切って石炭を大量にくべると、やっと圧が上がり始めた。圧力が0.2MPaになったところで電動ブロアーを外して通風に切り替える。
ボイラー周囲を観察し、ボイラー本体から漏れがないことを確認したが、水面計のドレン弁および、シリンダーのドレン弁から水のしたたりが認められた。シリンダーのドレン弁は、弁をクローズにしても、さらに加減弁を閉じていても漏れている。これは即ち、加減弁とドレン弁の双方に漏れがあることを示している。
安全弁が吹いたところで試運転を開始。加減弁を開けると、あっさりと動き出した。OS線路の半径7.5メートル通過を確認できたが、やはり曲線では走行抵抗が大きくなる。S氏のレイアウトは、一部が自作レールで急曲線になっており、ここだけは通過できなかったので、そこを除く範囲で往復運転をした。動輪の動きに連動したきしみ音がしたが、動輪回りの可動部分に注油をして消えた。
他に問題点として、加速しようとするとすぐに空転する。C53が完成すると、本体重量は150kg程度となり、動輪軸重はその半分程度と思われるが、現状ではボイラー回りの艤装がないため120kg程度で、軸重は先台車に集中しており、動輪軸重はせいぜい50kg強だと思われる。これで120kgの本体と50kgのテンダーに運転士を牽き、さらに各部に当たりが付いてなくて機関抵抗が大きいことを考えると、空転はやむなしといったところか。
火室の燃焼状態に関しては、火勢が火床の奥の方に集中しており、通風が不均一になっている可能性がある。
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いろいろ問題は発覚したが、とりあえず無事に走る事が出来たので、試運転は「60%成功」としたい。
加減弁と灰箱を改造するため、いったんボイラーを下ろした。灰箱と煙室は、燃え殻と煤でかなり汚れていた。
加減弁の漏れを軽減するため、スライド弁の改造を行った。写真の左が改造前で右が改造後である。写真は裏から見たところで、改造前は単なる直方体だったが、面積を増やし、裏面に座繰りを入れて内部を減圧することで、弁体が弁座に押し付けられるようにした。
さらに加減弁を弁座に押し付けるスプリングの線径を太くして、スプリングを強化した。写真右は新旧のスプリングを比較したところ。この状態で再び加減弁を組み上げた。シリンダードレン弁の漏れについては、試運転で漏れている個体を同定できなかったので、対策は先送りとする。
火格子の通風を均一にするため、灰箱の前部開口を塞いだ。ライブスチームにおいては、灰箱の開口は後方のみで良いとされている。しかしC53実機では灰箱の前後に開閉調整窓が付いていて、自分は前後とも50%開いた状態を初期設定としていたが、やはりそれだと通風が前方に集中してしまうようなので、前の開口を完全に塞ぐことにした。写真左が改造前で右が改造後。
水面計のドレン弁については、単純にコックを固定するダブルナットが緩んでいたので、締め直した。
以上の対策を施して約1か月後に再び試運転を行った。諸事情により撮影できなかったが、加減弁からの漏れは目視では認められなかった。水面計ドレン弁からの漏れについては、多少改善したものの依然として水がしたたっており、ニードル式に変えるなどの抜本的対策が必要である。火格子に付いては燃焼が均一になり、前回よりパワーアップしたように感じた。
前回確認できなかったシリンダードレン弁の漏れ個体を同定し、試運転後に分解調査したが、球弁と弁座の間にキリコのようなものが溜まっていた。どうやらシリンダーを加工した際のキリコが残っていたと思われる。加工後に水洗いしたが不充分だったようである。
まだまだ完全ではないが、致命的問題はないということで、試運転はいったんここで終了し、再び工作に戻る。キリの良いところで、来月は休刊とさせていただきます。
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