2000年3月 「ポニー台車」


ポニー鋳物ボイラーができたところで、下回りの工作に移るが、
いきなり主台枠を作るのもまた難儀なので、
先にポニー台車(先台車、従台車)を作ることにした。
WILLIAMのポニー台車は、前後まったく同じ形で、
台枠とスポーク車輪が鋳物で提供されている(写真)。
工作は比較的簡単である。



【ポニー台枠】

台枠は参考書どおり、精度が必要なところを機械加工、他をヤスリ仕上げとしたが、
ヤスリをかけずに鋳物面を残した方が、実感的で良かったかもしれない。
まず上面を面板に押しつけ固定し、バイトで底面を削り、
反転させて上面を削り、高さを出す。
続いて側面だが、上面と垂直に削るために、上面をアングルに押し付けて固定し、
ミニフライス盤のステージに固定して、エンドミルで正面削りをする(写真左)。
これをまた面板に移して、旋盤で反対側の側面を削って、幅を出す(写真右)。

側面削り1側面削り2

ここでピボット軸穴の高さを確認したが、鋳物の反りのため、低すぎることがわかり、
万力に挟んでおっかなびっくり矯正し、再び面板にチャックして側面を仕上げ直した。

軸穴仕上げ続いて定盤上に前のめりに立て、側面をブロックに固定し、
ピボット軸穴の位置を基準にして、側面に車軸中心位置をケガいた。
ここには外径13mmの車軸ブッシュが入るが、またまた大穴なので、
バーティカルスライダーに固定し、旋盤主軸にドリルチャックを付けて、
小径から次第に拡大して穴を開け、リーマを通して仕上げた。
ピボット軸穴(φ8mm)も同様にして開けた。

車軸ブッシュは、φ15リン青銅丸棒から削り出した。
外径は台枠穴とのはめ合いを見て合わせ、内径はリーマ仕上げする。
続いてφ10のS45C丸棒から車軸を作るが、段差加工は車輪を作った後とする。
とりあえず長さを出し、両端にセンタードリル穴を開けておく。

これらを仮組みし、車軸がスムーズに回ることを確認する。


【タイヤコンタ】

車輪各部名称車輪を削る前にタイヤコンタ(車輪断面形状)を決めないといけない。
WILLIAMオリジナルのタイヤコンタは、バックゲージがわりと広く、
その分、フランジが薄くなっている。
そしてトレッドにもフランジにもテーパーが付いておらず、
トレッド〜フランジ間のRは、2.4mmと比較的大きい。

トレッドにテーパーを付けると、
復元力が働いて直進安定性が良くなるので、
OS規格などに習って3度のテーパーを付けることにした。
フランジにテーパーを付けると、フランジの摩耗防止になるが、
もともとフランジが薄いので、ここはストレートのままとした。
トレッド〜フランジ間のRは、手持ちの丸ヤスリの都合で、1.5mmにした。
他の部分は、WILLIAMオリジナルを1インチ=25.6mmで換算して出し、
バックゲージのみ25.4mmで換算して、0.1mm未満の端数は切り捨てた。

なお、動輪もポニー台車もタイヤコンタは揃えておくのが基本であり、
ここで決めたタイヤコンタは動輪にも適用することになる。


【車輪切削】

車輪は加工前に全体を塗装しておき、加工により
フランジ、トレッド、ボスの塗装を落とすのが一般的であるが、
塗料もまだ買ってないので、後から塗装して磨き出すことにした。
ただし英国の参考書には、磨き出しは邪道というようなことを書いてある。
加工は以下の手順で行った。

1.三爪作業
 あとで述べるが、最初は四爪チャックでやる方が良かった。

 (1) 鋳物の突起などをヤスリで除去
 (2) 三爪チャックで表を外にしてチャックし、リムとボスとをクリーニング
  (クリーニングとは、鋳物の皮を完全に剥いて、機械加工面を出すことをいう)
 (3) トレッドを、チャックの直前まで段差加工(仕上げしろは残す)
 (4) 削ったトレッドの段差をチャック(逆チャック)し、裏面を仕上げ削り
 (5) 剣バイトで裏面輪芯くぼみを仕上げ削り
 (6) センタードリル→φ7→中繰りφ7.8→φ8リーマ
 (7) またひっくり返してチャックし、ボス面を仕上げ削り

クリーニング軸穴開け

ヤトイ2.ヤトイ作業
 ヤトイは、車輪を芯出しする軸、車輪を面出しするリム、
 回り止めのためのピンなどで構成されている(右写真)。
 作製手順は省略するが、リムと軸とを削り出した以後は、
 全ての車輪加工が終わるまで三爪チャックから外してはいけない。
 従って、回り止めピンなどは先に仕上げておく。
 軸の先端部分には、車輪固定のためのネジを切っておく。
 固定ナットは真鍮製のものを使えば、車輪を傷付けることがない。
 このヤトイを用いて、以下のごとく車輪を仕上げた。

 (1)フランジ外径仕上げ削り
 (2)車輪厚さ(リム)仕上げ削り
 (3)輪芯内外段差削り(鋳物と加工面の継ぎ目を目立たなくするため)
 (4)トレッド平行削り
 (5)トレッド〜フランジ間のRを細かく段差削り(図参照)したのち、丸ヤスリ仕上げ
 (6)トレッドテーパー削り
 (7)トレッド前端の面取り
 (8)フランジ前後を面取り後、ヤスリで丸く仕上げる

ヤトイ作業完成車輪      R段差削り

 全ての仕上げ削りは、刃先位置を固定してローテーション、
 つまり車輪を順次入れ替えながら行う。
 これにより完全に寸法の揃った車輪ができる。

輪芯削りをしていた時点で、車輪の1個のボスがひどく偏心していることに気付いた。
偏心が取れるまで削ったが、ボス直径は設計より小さくなってしまい、
他の車輪も全てこの寸法に揃えざるをえなくなった。
おかげで、全ての車輪のスポーク内周部をヤスリで整形するはめになった。
鋳物の状態で外周とボスとが偏心していたことが原因である。

最初にボスの中心を求めてポンチを打ち、
四爪チャックで芯を出して最初の外周クリーニングをやり、
それから三爪チャックに切り替えるべきであった。



【仕上げ】

車輪ができたところで、車輪の穴に合わせて車軸両端の段差加工をする。
車軸に対して正確に同心円に加工する必要があり、
車軸径のコレットチャックを用いて精度を出した。
車輪はロックタイト固定するつもりなので、軸は穴より0.02mmほど細く仕上げた。
車軸端面とボスとが正確にツライチになるように注意する。

最後に、台枠に垂れ下がり防止のためのフックを取り付ける。
アングル材から削りだしたものを台枠にネジ止めした。

できあがった各部品を仮組みする。
残る作業は塗装後に行うので、とりあえずこのまま保管しておく。

仮組み完成

(終)


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