2003年12月 「ランボード」
今回は、苦手の板金工作である。材料の切り出しには、定石どおりバローベの糸のこ刃を用いた。グロス単位で買って、消費を気にせず使う。各種サイズをそろえると金がかかるが、とりあえず#1だけあればだいたい間に合う。0.5mm間隔の2本線をけがいてここからはみ出さないように糸のこで切り取れば良いのだが、私がやると1mm間隔の2本線でもはみ出してしまうので、仕上げしろを残して切り取り、エンドミルで仕上げることにした。バローベの刃が泣くというものだが・・・
ランボード(running board)には網目板を用いると実感的になる。一本松同好会の木村氏より、1.5mm厚の真鍮エッチングの網目板を分けてもらっていたので、これを用いてランボードを作った。サイドタンクの下に隠れる部分については、もったいないのでただの1.5mm真鍮板を用いた。
矯正して垂直を出したアングル材を、フライス盤ステージのX軸と平行に固定し、材料の基準辺をここに押し付けて固定すれば、残る3辺をすべて直角に仕上げることができる。Y軸のダイヤル管理で材料の幅も正確に出せるので、すべてのランボード材料の幅を正確に揃えることができる。材料は糸のこで切り出し、平鋼などでかさ上げしてステージに固定し、エンドミルの側面で直線を仕上げた。ヤスリで仕上げるよりはずっと早く正確に仕上がる(私だけ?)。
ランボード中間の曲面部分は、真鍮丸棒を芯にして曲げた。設計どおり正確に曲げるのは難しく、曲げた結果から現物合わせで他の部品寸法を決める方が簡単である。材料の端部がRの途中になる場合、端部まで一定の曲率で曲げるのは難しい。余剰を取って切り出し、曲げたあとに端部を切断して所定の段差になるようにすれば良い。
長い距離のケガキはハイトゲージではできない。いつだったか、円筒を積み上げてハイトゲージをかさ上げしてけがくという酔狂な方法を紹介したが、材料と金尺を机上に固定してスコヤを用いてけがけば、0.2mm単位の正確なケガキをすることができる。真鍮へのケガキはカッターでもできる。ケガキ針のように頻繁に研ぎ直す必要がないので楽である。
ランボードの垂れ板(valance)はアングル材を用いて表現するのが一般的だが、WILLIAMでは角材が使用されている。アングルより強度があり、多少なりともウェイトが増えるというのがメリットである。私は真鍮の5×5mm角棒を使用した。ランボード中間のR部分を手で曲げるのはとても無理だが、メタルベンダーを使うといとも簡単に曲げることができた。Rの内周と外周で材料の伸び縮みが生じて、断面が台形になるので、外側の側面だけヤスリで矯正して平面を出し直した。
ランボードに垂れ板を位置決めし、ネジ止め用の穴を開ける。上からネジ止めすると、ランボード上にスケールオーバーのネジ頭が並ぶことになるので、ランボード側にネジを切って裏側から皿ネジで固定し、ネジ先端はランボードとツライチでカットすることにした。最終的にはハンダを流して補強する予定。これで塗装してしまえば、ネジの存在はわからなくなる。
R部分の端部。ここで上のランボードと接続される。接続用の真鍮アングル材は、股を万力で拡げ、さらに丸ヤスリでR部の曲面に合うように矯正してから使用した。
私のWILLIAMは1/12スケール化で車幅を拡げたのだが、前部デッキの幅があまりにも広くなりバランスが悪くなった。そこでランボードの幅を途中から変えて、前半部の車幅を詰めることにした。ちょうど垂れ板の横幅分だけ詰めたので、垂れ板は写真のような処理をして段差を表現した(裏から見たところ)。
前端部は、主台枠間にも網目板を追加する。先台車のスプリングピンがデッキ中央部から突出してしまうので、国鉄9600型にならって、先台車スプリング位置にドームを設置して、ピンを隠すことにした。ドームは真鍮丸棒を旋削して作った。
ランボード後端は、後部端梁と給水ブロックの間にはさまれて固定される。左右のランボードの間にも板を追加し、後端部が一直線になるようにする。
オイルポンプは仮のブラケットに固定していたが、いったん取りはずし、できあがったランボード上に再固定する。スイングアームが貫通する長穴は糸のこで抜き、ヤスリで仕上げた。固定ネジ穴は、ブラケットを位置決め治具として開けた。
せっかくきれいに仕上げた接続ロッドが、垂れ板の陰に隠れて全く見えなくなってしまった。
(終)