2004年10月 「曲げロール」
キャブの屋根は、半径が20センチ以上という大カーブに曲げる必要がある。いつものように丸棒を芯にして曲げようとすると、土管くらいは必要になってしまうので、ここはひとつ「曲げロール」を作ることにした。横に並べた2本の固定ロールの上に材料を置き、上から1本の可動ロールを押し付けながらロールを回して曲げるという、オーソドックスな方式を選んだ。Martin
Evansの本にイラストが載っていたのでそれを参考に、なるだけ簡略化して設計した。5インチ国鉄型の屋根まで対応できるように、有効長を375mmとし、ロールは直径30mmの丸棒を使用することにした。なるだけ、あり合わせの鋼材で作れるように設計した。
両端の軸受けに使えるサイズの鋼材がなかったので、細い平鋼材を貼り合わせて使った。真鍮製のスタッドとナットで19*12mmの平鋼材3枚を固定し、銀ロウ付けした。凹部分に可動ロールの軸箱が入ることになる。ロウ付け後に両端の真鍮スタッドを切り取り、上下の寸法を仕上げる。
銀ロウ付けでわずかなすき間が生じたため、両側の柱が完全に平行になっていない。16mmのエンドミルで矯正した。
加工の終わった軸受け。穴はリーマで仕上げた。リン青銅などのブッシュを入れた方が良いのだが、常時回転させる機械ではないので、潤滑油だけで済ませることにした。頂部のステイは、まずステイ単独で穴を開け、それを軸受けに移し開けてタップを立てた。
底板の下部にはさらに二段重ねの鋼材を取り付ける。万力に固定するための「足」だが、底板の補強も兼ねている。ここの鋼材は、軸受けに用いたものと同じ。ちなみに底板は、William主台枠の中間梁に用いた鋼材である。すべての組み立てにはM6ボルトを使用した。
平ギアは逆転機のときと同様、「協育歯車」から手配した。S45C焼き入れ品で、ピッチ径30mm、内径12mmのもの。キーではなくセットビスで固定するタイプで、そのためのブッシュが一体になっている。
ロール用には、直径30mmのS45C丸棒を新たに手配した。帯ノコで所定長さに切断して使用する。太い丸棒を切断する際は、時々まわしながら全周から少しずつ切り込んでいくと良い。
30mm丸棒は旋盤の主軸を通らないので、固定振れ止めを用いて、旋盤のベッドの右端で加工する。375mmという有効長はここで決まった。この旋盤ではこれ以上の長さの丸棒は旋削することができないのだ。固定振れ止めによる加工は、三爪チャックによる加工よりも正確にセンターが出る。
ギアのスリップ防止のため、セットビスが当たる部分を、わずかに平面加工する。
加工の終わった丸棒。軸部分はサンドペーパーで研磨して仕上げた。駆動用ギアの軸は13mmの鋼丸棒を使用した。両端を12mmに段差加工して抜け落ち防止とする。
可動ロールの軸箱は砲金丸棒から作った。中心にリーマ穴を開けてから、エンドミルで平面加工をする。フランジ加工はせず、ロールから抜け落ちないようにスナップリングを用いて固定した。押しボルトが当たる面にはS45C平板を接着した。
ロールを本体に入れてギアを取り付け、駆動軸にブッシュを固定して操作ハンドルを付ければ完成。ハンドルはねじ込み式で着脱可能にした。
曲げロールなど、ボイラー製作前に作るべきであることは百も承知しているが、タイミングの悪さは生まれつきである。機関車の完成を目前にして、休刊はするわ、変な道具は作るわで、もうしわけないが、けっして読者をじらしているわけではない。
(終)