2004年11月 「板金工作(1)」


上まわりの材料には、厚さ1.5mmの真鍮板を用いた。定尺365×1200mmを1枚、ほぼ使い切った。この厚さの真鍮板を切断する場合、正確に切るには糸ノコを用いるのが良いが、とても時間がかかる。刃の消費も多い。その点、帯ノコを使うと作業が早く刃先の消耗も少なくて済む。厚さが1.5mmあれば、変形なく切ることができる。ただしヤスリ等での仕上げ作業が大変になる。という具合で一長一短であり、結局、形状が複雑な側板とキャブ前板だけ糸ノコで切り、それ以外は帯ノコで切って、エンドミルで仕上げることにした。

糸ノコ切断
糸ノコでの切断では、柄のフトコロのサイズが問題となる。手持ちのものは最大で240mmで、3インチ半であればこれでほぼ対応できるが、場所によっては、刃を逆向きに付けなければ切れない。写真はその例であり、刃先は柄の内側に向かって取り付けられている。切断の途中で刃を材料に通したまま柄をはずし、向きを変えて取り付け、再び切り進む。こうすれば、一筆書きで切ることができる。


帯ノコ切断
矩形のプレート類は帯ノコで切り出した。糸ノコの10倍くらいの速さで切れる。長い距離を切るためには、柄に対して刃先を横向きに取り付けて、柄が横に逃げるようにして切らなければならない。手持ちのものは90度ではなく60度まわすようになっている。柄を真横にして切るよりは力が入れやすい。こののち、エンドミルで四辺を仕上げた。


板材完成
切断を終え、加工の終わった板材。キャブの屋根および前板は含まれていない。


窓枠はアングル材から作った。ご覧のようにR部分だけアングルの水平側を切り落として、曲げられる状態にした。上部の大半径部分は水平側に多数の切れ目を入れて曲げた。全体を焼鈍し、鋼丸棒に沿わせて曲げ、窓に入れてみて形状の微調整をする。
窓枠作製窓枠調整


【第二回試運転】

関門ライブスチーム同好会の運転会で、二度目の試運転を敢行した。前回の試運転後に全分解、塗装、再組立しておりその確認が主目的だが、一部、試運転で見つかった不具合を修正している。まずその紹介から。

オイルポンプ修正
オイルポンプが不調でボディを作り直したが、それでもまだ完全ではなかった。前回の試運転で原因がやっとわかった。フックの噛み込みが弱くて、ラッチホイールがスリップしていたのだ。大気圧で前後に動かすぶんには問題なく回るのだが、シリンダーに圧をかけると抵抗が増えてスリップする。フック形状とラッチ形状にも問題があるようだが、作り直すのは大変なので、とりあえずフックのスプリングを強化して対処した。さらにリン青銅製の板バネをステンレス製に換装し、この位置を調整して1ストロークでラッチ2山が回るようにした。ステンレス材はバネ専用の材料(SUS304CSP)であり、"New Shay"の中原氏にいただいたものである。


オリフィス径拡大
キャブ後方の水面計(真鍮パイプ)だが、運転の加減速でタンクの水が前後に揺さぶられ、ここのパイプから吹き出してキャブが水びたしになるという不具合があった。この対策として、パイプの底に「オリフィス」を取り付けた。すなわち、ここで穴の直径を絞って、パイプに出入りする水の速度を制限し、急激な水面の上昇を防ぐというものである。



運転会は昨年に引き続き、北九州の「平尾台自然の郷」で開催された。OS仮設線路での運転だが、傾斜がきつく、レイアウト一周で力行と惰行をせわしなく切り換えながらの運転となった。

運客停車中走行中

木炭で火入れして問題なく蒸気上げして走り出したのだが、二周で圧が下がってまた引込み線に戻るはめになった。実は同じ失敗を一本松でもやらかしたのだが、WILLIAMはボイラーが小さいため、わずかの石炭を燃やしただけで蒸気上げが終わってしまうのだ。そこであわてて走り出すと、石炭不足ですぐ止まってしまう。傾斜のせいか、前回運転した時より石炭消費量が多く、焚口ぎりぎりくらいまで詰め込んで、どうにか連続走行できるようになった。

小さい機関車は、走行時と停止時のボイラーの負荷が大きく異なる。停止するとすぐ安全弁が吹き出して止まらないのだが、ここで石炭を追加しておかないと、走り始めてすぐに圧が下がってしまう。さらに給水すると直ちに缶水温度が下がる。軸動ポンプのリターンバルブを開いたときと閉じたときで、機関車のパワーが全然違う。逆にこれを利用して、ボイラーの水温を調整することができる。

昼食をはさみ、合計4時間ほど運転して終了。消火を確認して火格子を下に落としたが、燃え殻があまり出てこない。ウェルズ炭とはいえおかしいなと思いつつ、機関車をケースにしまって前倒しにして火室をのぞいてびっくり! 蜂の巣のような燃え殻の固まりが、火室前壁にこびりついているではないか! 火かき棒でつつくとバラバラとくだけて大量の燃え殻が落ちてきた。火格子のスリットが狭すぎるのか、火床のかきまぜが足らなかったのか、これでよく最後までパワーを維持できたものである。


(終)


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