目次 / 前月 / 次月
2021年3月 「ボイラー銀ロウ付け(3)」
S氏邸で、第3回の銀ロウ付け作業を実施した。まず、煙室管板に過熱管接続用のブッシュを付ける。ここも銅をかしめて仮固定し、下から加熱して銀ロウを流した。
外火室後板に追加した、逆止弁用のブッシュを銀ロウ付けする。
今回、JMRCのU氏の勧めで、プロパン酸素バーナーを試した。日酸タナカの「中型LPG加熱器」というものである。火口は口径30mm程度で、アセチレン酸素バーナーとプロパン単独バーナーの中間的な位置にある。やはり火力が強く、手持ちの70mm火口のプロパンバーナーと同等以上の火力が得られる。その分、炎の温度は高く、より局所加熱となり、母材を溶かさないように注意が必要である。
メリットとしては、酸素を自己供給するので、狭い場所に炎を吹き込んでも、酸欠で失火することがない。たとえば内火室の修復などに役立ちそうである。また同じ熱量のプロパンバーナーと比較すると燃焼ガスが少ない分、騒音も小さく、宅地での使用に向いているかもしれない。デメリットとして酸素の消費量が多く(プロパン使用量の約3倍)、ランニングコストが高くつく。ツールを揃える初期費用も当然ながらプロパン単独より高くなる。
プロパン酸素バーナーは、酸素を扱うので、プロパン単独の場合より危険度が高く、より専門的な知識が必要となる。自分は講習等には参加していないが、安全点検方法など参考書でひととおり勉強した。
自宅で準備してきたセットアップで、喉板と火室天板を銀ロウ付け。ここで試しにプロパン酸素バーナーを使ってみた。一定の距離を保って全体を均一に加熱する限りは、使い勝手は口径70mmのプロパンバーナーとほぼ同じであった。銀ロウが溶けるまでに要する時間もほぼ同じで、この程度であれば5分以内に作業は終わる。
銀ロウ付け終了後に内外接合部を確認したが、銀ロウが外側に充分流れ出ていない部分があったので、冷える前に追加でロウを流した。追加でフラックスを塗り、再加熱して銀ロウを流す。冷える前だったので短時間でロウ付け温度に達して流れた。
前の缶胴に付け忘れていた逆止弁ブッシュを付けた。ブッシュは缶胴内側から小ネジ2本で固定し、表から周囲に銀ロウを流した。
クラウンステイを固定している真鍮ネジの内側に銀ロウが回ってなかったので、念のため火室内部からネジ周辺に銀ロウを流した。
帰宅後にロウ付けの再点検をしたのだが、内火室後板の接合位置に隙間が出現しているではないか! 第一回の銀ロウ付け作業で、板の密着が悪いと懸念していた箇所で、その時は隙間はなかったが、他の場所の銀ロウ付けの再加熱で、銀ロウが溶けだして隙間が出現したと思われる。
このまま上から銀ロウを流して修復すると、先々の銀ロウ付けで再び隙間が出現する危険性がある。それがボイラー製作の最終段階だと、修復が困難となる。何とか機械的に隙間をなくせないかと考え、隙間に薄板を挟む方法で修復を試みた。以下、詳細を説明する。
メタルソーで欠陥部分を切り離す。ギャップが0.2mm程度であり、それをカバーする形で、厚さ0.3mmのメタルソーで切り離す。
そのままだとメタルソーの外周に沿って切り口が弧になるので、糸鋸で追加の切れ目を入れて、切り口を垂直にする。糸鋸の刃の側面が、内火室側板に密着した状態で切らなければならないが、普通に糸鋸柄に取り付けた状態だと、柄が邪魔で密着させられない。そこで、柄に部品を追加して、鋸刃を横に押し曲げて、刃の側面が内火室に密着できるようにした。
0.3mmのリン青銅を切って隙間に押し込み、リベットを追加して固定する。最後にフラックスを塗って、次回の銀ロウ付けに備える。
目次 / 前月 / 次月