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2021年6月 「ボイラー修理(1)」



ボイラーの圧力試験をするための器具を準備する。まずブッシュとフランジを塞ぐ真鍮プラグから。過去の経験より、圧力試験を幾度となく繰り返すことが予想されたので、作業を少しでも楽にするため、プラグ類はすべてOリングでシールすることにした。写真は、プラグの部品とそれを組み立てた状態を示す。Oリングの外周には真鍮のリングを入れて、Oリングの拡がりを防ぐとともに、つぶししろを固定した。使用したのは直径1.9mmのOリングで、つぶししろは0.4mmとした。



準備したすべてのプラグの写真。ネジのサイズは、安全弁と蒸気箱のブッシュがPF1/4インチ、排水弁がM10×0.75、それ以外は全てM8×0.75である。プラグの一部は、圧力計またはハンドポンプを接続できるように二重構造としている。



こちらはフランジを塞ぐための円盤。大きいものから順に、蒸気ドーム用、加減弁(後部)用、加減弁(前部)用である。これらも同様にOリングを使用し、その外側にリングを入れている。



給水用のハンドポンプは、ハンスレットのOS製ハンドポンプを取り外して利用した。プラ製の洗面器の底にネジ止めしてタンク代わりにする。先端の配管途中に付けている筒状の部品は、ウイリアムの圧力試験で使用した逆止弁(Oリングシール)である。その他、圧力計もウイリアムで使用したものをそのまま再利用する。



第1回のテストは自宅の浴室で行った。ボイラーにプラグ類をねじ込み、風呂桶の蓋の上にひっくり返して置き(火室内部を見るため)、排水口から水を注入していった。


ある程度予想していたが、圧力を上げるまでもなく、水を満たしただけで漏れ始めた。煙室管板のロングステイの接合位置が3か所とも漏れている。さらに前後缶胴の継目の一部、そして底枠の左右前端から水が垂れている。さらに微漏れ箇所として、煙室管板固定ネジの周囲、蒸気箱ブッシュ、加減弁フランジ、リベット・ネジ類、サイドステイ、小煙管前端など、多数の漏れが確認された。まあ最初はこんなものだろう。煙室管板については、出張作業の最後で時間に追われながらやったので、銀ロウが充分に流れていなかったようである。


ここから再びS氏の工房にお邪魔して修理作業を開始した。手順は、ボイラーをある方向に置いて、その置き方で上からロウを流せる位置をまとめて修復するという方法を採った。使用したのはいずれもプロパンバーナーである。




特記事項として、底枠を修理するのに、内外ボイラーをセラミックシートで保護して実施したのだが、これだと底枠だけでバーナーの熱を受け取れず、いくら加熱してもロウ付け温度に達しなかった。途中で外側のセラミックシートを外し、外火室と底枠を同時に加熱して作業を続行した。ここは結局、時間を掛け過ぎてフラックスが劣化し、ロウの流れが不完全になったので、最初からやり直した。



ここで第2回のテストを実施。ブッシュをプラグで塞ぎ、後ろを上にしてボイラーを立て、上から水を注水していったのだが、半分も入れないうちに前後の缶胴の継ぎ目の下部から、大量の水が流れ出した。さらに方向を変えて確認すると、サイドステイの外側数か所が漏れており、そして内火室後板の天井付近からも水が染み出している。漏れの状態が悪化し、さらに恐れていた内火室からの漏れが見つかり、大きく落胆。


前後の缶胴の継ぎ目は、望遠鏡式の段差接続としたが、そのために接続部の隙間調整が難しく、特に銀ロウ付けの際に外から加熱すると外周側の缶胴が余計に膨張して隙間が広がり、修理で傷口が拡大したと思われる。ここは帯板を用いた平行接続とするべきであった。1.6mmの銀ロウを並べて、慎重に修復を実施した。特に缶胴の底の継ぎ目同士が合わさる十字の継ぎ目部分は、ロウを多めに流し込んで隙間を埋めた。



サイドステイ外側もここで修復。モーターツールで余計な銀ロウを削り落とし、再び銀ロウを置いて継ぎ目に流し込んだ。サイドステイはプロパンバーナーのみだと火力がぎりぎりで、10分の加熱でやっと溶ける状態である。



内火室の漏れ修理は先送りにして、第3回のテストを実施。サイドステイ外側からまだ水がしみ出している。さらにネジやリベットの頭からもしみ出しあり。内火室の漏れを詳細確認すると、内火室後板の右側の肩の部分から水が出ている。この時点で二日間の出張修理は時間切れとなった。


現時点でのボイラーの写真。この段階ではまだ流した銀ロウの量も少なく、綺麗な外観を保っている。



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