目次 / 前月 / 次月

2022年3月 「水面計」


今月より、フィッティング、すなわちボイラー周りの配管用器具の製作を始める。まずボイラーのバックヘッドに取り付ける水面計から作った。加工の手順をわかりやすくするため、先に完成写真を示す。


水面計は実機と同様に左右に2本設置する。日本型のようなラウンドトップのボイラーの場合、水面計の上端をバックヘッド範囲内に収めようとすると、ボイラー頂点までの水位を測定できなくなる。そこで、バックヘッドのブッシュを上に延長するアーム(角柱)を設け、上胴体を上に持ち上げることにした。これはWILLIAMで採用した構造だが、難点として水面計上端に溜まったエアが抜けなくなる。対策として、水面計上端から蒸気箱にバイパスを接続し、エア抜きをする。

上の写真では未接続だが、角柱の上端に付いているリング状の部品が、バイパス接続口である。下胴体の下にはドレンコックを設け、気泡が噛んだ時に抜けるようにする。ドレンコックはSUS303製のテーパーピンから作ったものである。


ボイラーは度重なる修復でバックヘッドが変形していて、上下の水面計ブッシュが平行になっていない。無理して矯正はせず、傾きに合わせて部品を作る。写真のように金尺と分度器でブッシュの傾きを測定し、それに応じて水面計を設計した。



水面計のガラス管は、JMRCのN氏よりいただいた9mmの厚肉ガラス管を使用した。ガラスは糸鋸では切れない。モーターツールにダイヤモンドディスクをセットして切断した。



ガラス管が太いと、袋ナットも大きなサイズが必要で、ネジはM14×1を採用した。加工には使い捨てタップ・ダイスを使用した。ネジのクリーニングにしか使えないということだったが、真鍮丸棒を数回切るくらいであれば使用に耐えるようである。材料を旋盤にチャックしたまま、チャックとハンドルを交互に少しずつ手で回して切った。



下胴体の下部に、テーパーピンのドレンコックを差し込むためのテーパー穴を開ける。ドリルで下穴を開け、テーパーピンリーマを手回しして仕上げた。リーマに巻いているテープは、切り込み深さを決める目安である。



下胴体に、ブッシュにねじ込む横パイプを接続する穴を開けるが、ブッシュの傾きに対応するため、所定の角度に傾けて穴を掘っている。



銀ロウ付け前の各部品を示す。短いリング状の部品は、角棒と上胴体を接続するための短管である。



ドレンコックとなるテーパーピンをL型に曲げる時に、先端部分を変形させてしまうと、水漏れの原因となる。変形なく曲げるため、写真のような治具を用意した。先端部分をテーパー穴に収めて保護した状態で根元だけを曲げるための治具である。



先端のテーパー部分を真鍮丸棒の自作コレットで保持し、先端の段差加工とねじ切りを行う。最初はL型に曲げる前にこの加工をしたのだが、それだと先端の変形を防ぐことができなかったので、段取りを改めて事後加工とした次第である。



最後に、下胴体をガイドとしてコックに横穴を開ける。実機ではドレンコックは下向きでクローズ、横向きでオープンとなっているので、それに習って横向きの状態で貫通穴を開ける。



コックの取り付けは、はスプリングワッシャを入れてからダブルナットでロックしている。スプリングワッシャを軽く潰して、コックとテーパー穴に隙間が出ないようにしている。



写真は、角棒の上のバイパス接続用の部品。タブレット状の部品の横穴に銅管が銀ロウ付けされる。皿ボルトは中空になってて側面に穴が開いている。蒸気はボルトの中を通ってタブレット内部に出て、銅管から外に送り出される。皿ボルトは、最初に旋盤で穴まで旋削加工し、横穴を貫通させてから突っ切って仕上げた。




ここまでの状態で組み上げたのが最初の写真だが、ここで問題が発生。水面計の下に付ける焚口戸の操作ハンドルが、ドレンコックと干渉することが発覚したのだ。ドレンコックを前向きにしているが、これを左右外側に向ければ干渉しなくなる。下胴体を上下分割して、ロックナットでコックの向きを自由に変えられるようにした。



上下の胴体をブッシュにねじ込み、ガラス管と同じ太さの丸棒を通し、上下が一直線になるように、ねじ込み量と角度を調整し、ロックナットで固定する。ここで多少の傾きが出てもガラスが割れないように、ガラスの長さと周囲のクリアランスを決めている。ガラス管は胴体上から挿入され、上下にOリングを通し、袋ナットでOリングをつぶしてシールする。ガラス破損を防ぐため、袋ナットは指で締められる程度の固さとしておく。



改めて組み上げた全体写真がこちら。最初の写真と、ドレンコックの方向が違っている点に注意。



目次 / 前月 / 次月