2002年5月 「モーションプレート」
WILLIAMのようにスライドバーが上下2本ある機関車の場合、モーションプレートは直立した板に加減リンクブラケットが付いた形となっている。主台枠に取り付けた状態で、スライドバー保持位置と加減リンク軸位置を正確に出す必要があり、そのためには部品の段階で精度が出てなければ話にならない。最初にリンクブラケットから作った。
【加減リンクブラケット】
厚さ6mmの軟鋼から作った。まずモーションプレートに接する面を先に仕上げ、これに垂直にブッシュ中心線をけがく。この線が取り付け時の位置出しの基準となる。
最初にブッシュを入れる穴を旋盤で開け(リーマ仕上げ)、次に台形の窓を抜く。四隅にドリルで穴を開けて糸ノコで切断し、ヤスリで仕上げた。写真は、ヤスリで仕上げた状態と、穴をあけただけの状態。
オムスビ形の外形をロータリーテーブル上で仕上げる。加工物を極座標で動かして、二辺とその頂点(R)を一気に仕上げる。
【モーションプレート】
材料は主台枠と同じ3mm軟鋼板を使い、工法も主台枠と同じである。すなわち、おおまかな形に切り出して左右2枚を銅リベットで固定し、2枚まとめて機械加工する。先にリンクブラケット固定穴を開け、ここを銅リベットで固定した。
まず上の辺と外側の辺を仕上げ、これを基準に残りのシルエットを仕上げる。フィレット部分とそれをはさむ二辺はロータリーテーブルで仕上げた。
スライドバーが収まる溝を、ウッドラフカッターで仕上げる。最も精度が必要な部分であり、ダイヤルゲージを使って正確に垂直に固定し、上下の精度はノギスで、左右の精度はカッター刃先位置で出した。溝幅はスライドバー材料との現物合わせで追い込んだ。
ラジアスロッドが通る長穴を開ける。長穴の両端部分にドリルで穴を開け、糸ノコを通して切り抜き、ヤスリで長穴に仕上げる。事前に万力のアゴをヤスリで矯正し、ここを基準にして直線を出した。短辺はヤスリのコバを使ってていねいに仕上げる。
モーションプレートにリンクブラケット中心位置をけがき、リンクブラケットのケガキ線を合わせて組み合わせ、瞬間接着剤を流してからクランプで固定する。そしてモーションプレートの穴を通してブラケットにドリルで皿もみを入れる。ここで分解し、ネジ下穴径のドリルに持ち替えて、ブラケットに下穴を開けてタップを立てる。
モーションプレートを台枠に取り付けるためのアングル材には、英国から取り寄せた肉厚の引き抜き材を使用した。日本で売られている黒皮材よりはきれいだが、直角精度の悪さは似たようなものである。四爪チャックで直角を矯正してから使用した。
モーションプレートとアングル材はリベットで永久固定するようになっているが、適当なサイズのリベットを切らしていたので、細いリベットとボルトを併用して固定した。リベットは裏から通し、先端をつぶして皿もみの中に埋め込み、ヤスリで跡形なく仕上げる。リンクブラケットには、リン青銅から作ったブッシュを圧入する。
【スライドバー】
軟鋼平角棒の外形をそのまま使う。ただし両端に斜面を形成しないといけない。写真のような治具を作って斜面の角度を決め、次々と入れ替えて加工した。両端のネジ止め部分は治具固定のための余剰部で、仕上げる前に切り落とす。
モーションプレートとスライドバーは真鍮アングル材で組み立てるが、こちらも日本製は薄いものしかないので、英国から取り寄せた。長い材料のままで、端面をフライスで仕上げて必要な穴を開けてから、切断して反対側の端面を仕上げる。
次回は、シリンダーブロック、モーションプレート、スライドバー、メインロッドを一気に組み立てる。
(終)