2003年4月 「焚口戸、その他」


【動輪ロック】

動輪ロック
動輪と車軸はロックタイトで接着したが、これだけだと緩む場合があるらしい。そこで両者を機械的に固定することにした。その方法としてはテーパーピンを打ち込むのが一般的だが、穴を貫通にしない限り二度と抜けなくなる。しかし貫通にすると、動輪のボス表面に穴が露出し、外観を損なうことになる。そこで、止まり穴にしてタップを立て、セットビスをねじ込んで固定することにした。


動輪ロック加工中
動輪裏から斜めの穴を開けるため、アングルを用いて旋盤のテーブル上に動輪を固定し、エンドミルで平面部を作り、ドリルで穴をあけてタップを立てた。当然ながら、穴は先端が車軸に深く入り込むまで掘る。すなわち、セットビスをロックピンとして使用するのである。



【焚口戸】

焚口戸は高温になるので、焼損防止のため内側にステンレス板を付ける場合が多いが、WILLIAMの焚口戸は1枚ものでそれ自体がステンレス製となっている。材料の都合で、ステンレスの円柱材を突っ切って使ったのだが、この突っ切り作業が一番大変だった。少量の厚板が手に入れば、そこから切り出す方がずっと簡単に作れるだろう。ヒンジ機構は基本的に煙室扉と同じで、作製法も同様である。ヒンジのピンは、2mmφのステンレス丸棒に4mmφのリング状部品を銀ロウ付けしてヘッドとしたもので、上から刺しているだけ。扉には4個の空気穴が設けられていて、燃焼する石炭の上部に適度な空気を供給している。さらに、扉をロックするためのカンヌキが設けられている。

焚口戸開焚口戸閉


ヒンジ加工 ここの扉は煙室扉のような気密性は不要だが、閉めたときに周囲に隙間が見えるようでは困る。まず焚口輪の端面をオイルストーンで磨いて平面を出し、焚口戸の位置を決めてクランプ固定し、ヒンジの穴を移し開けた。ただし今度は、ラグ(ボイラー固定側)にすでに穴を開けているので、ラグからヒンジへの移し開けとなった。ヒンジをビス&ナットで仮止めし、ドリルをラグに通してヒンジへ皿もみを入れ、取り外して穴を貫通させた。ところが、ドリルの側面で真鍮製のラグが削られて穴が拡がってしまい、ピンを通すとガタガタになってしまった。そこでラグの両端を万力でつぶして、穴を楕円に変形させ、ガタが出ないようにした。この手のゴマカシは、お茶の子さいさい、へのかっぱ。もはや罪悪感ゼロである。


【プランジャー改造】

ポニープランジャー改造
エア試運転で、ポニー台車のスプリング機構に不具合が生じた。プランジャーもハウジングも同じ砲金鋳物から作ったのだが、同一材料の摺動のため偏摩耗が起き、動きが渋くなってきたのだ。そこで、摩耗したハウジングのボアの径を拡大し、これに合うようにプランジャーの軸をS45C丸棒から作り直した。下の円盤部分はそのまま残し、銀ロウ付けで軸と接合した。これで動きはずっとスムーズになった。



【主台枠取り付け部品】

主台枠への部品取り付け
今後、ボイラー配管類を作っていくことになるが、この時点で主台枠への加工はすべて済ませておくことにした。ランボードをサポートするアングル、灰箱をサポートする平板、ボイラーの膨張受けの浮き上がりを防ぐアングル等を作り、主台枠上に位置決めして取り付け穴を開けた。


ランボードサポート材
ランボードをサポートするアングルは、直角精度と強度を要求されるので、厚さ5ミリの黒皮アングル材の直角を矯正して使用した。まずアングル材の端面をエンドミルで仕上げてから切り出したが、反対側の加工のためのチャックが難しいので、鋼板にハンダ付けして、まとめて加工した。直角の矯正はこののちに行った。



【センターファインダー改造】

センターファインダー機関車の部品ではなく工具の話になるが、センターファインダーを改造したので報告する(実はずっと以前にやったのだが、記事を埋めるために今月登場・・・)。たとえば面板上に加工物をクランプで押し付けて固定した場合、通常のセンターファインダーでは、その軸受け部がクランプに当たって、先端が加工物に届かないことがある。単純に先端を延長すると、支点から力点までの距離が伸びるので、反対側先端の振れ拡大の倍率が減ってしまう。そこで、筒を作って、センターファインダーのブッシュ部分を前方に延長する構造にした。これで、倍率を犠牲にすることなく、チャックの奥深くに針先を導けるようになった。改造前の姿は、1999年4月の記事を参照のこと。



(終)


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