2004年6月 「砂箱」



以前紹介したとおり、蒸気ドームの後ろの注水プラグを隠すため、ダミーの砂箱を設ける。形状は、コッペルなどで見られる板金タイプとした。注水プラグの頂部は、砂箱のフタを兼ねているので、砂箱の穴とプラグとは完全に芯が合ってないと組み立て不能になる。加工精度だけで芯を合わせるのは難しく、取り付け手順に工夫が必要である。


天板&側板
砂箱の天板と側板は1枚板とした。1.2mmの真鍮板をメタルベンダーで曲げ、頂部の穴は四爪チャックでドリル穴を拡大して仕上げた。


妻板付け
妻板は現物合わせで形状を調整して銀ロウ付け。加熱中の保持のため、左右と上の三方向から細密ドリルで穴を掘り、φ0.7真鍮線を差して固定した。


砂撒き管カバー
砂箱の左右には砂撒き管が接続され、それをカバーする箱が設けられる。ここは真鍮ブロックを使用した。下部に管を差し込む穴を開けるが、さらに内部に座ぐりを入れて板厚を表現した。


カバー固定穴あけ
側板上に位置決めし、仮固定用の穴を貫通させ、ここも真鍮線で仮固定して銀ロウ付けした。ここまでできたところで全体をヤスリで仕上げ、銀ロウのはみ出し、真鍮線の痕跡などを消す。


ブッシュ&プラグ
ブッシュにプラグのみをねじ込んだ状態。砂箱を取り付けることを考えて、フランジは張り出し屋根としている。砂箱の底板を取り付けるためのねじ穴が見える。ちなみに、プラグの穴の奥には六角穴つきボルトが銀ロウ付けされており、六角レンチでプラグをまわせるようになっている。


底板取り付け
底板を作り、単独で位置決めをしてフランジに固定する。底板の四方には真鍮角棒で作った脚が付いている。現時点ではビス止め。


砂箱完成
砂箱をかぶせてプラグをねじ込むと、自動的に砂箱の芯が合う。プラグと穴とのクリアランスは0.5mm取ってあるので、位置決めの際にはボール紙を巻いた。砂箱と脚との間に瞬間接着剤を流して仮止めし、そのまま砂箱を底板ごとはずし、リベット穴を貫通させてから分解洗浄する。フラックスを塗って銅リベットで再組み立てし、内部に銀ロウを流して全部品を固定すれば完成。砂捲き管は、ボイラ覆いを作ってから付ける予定である。


【番外編 〜 Quick Change Tool Holder】

これは便利!だけど高い!

マイフォード旋盤のオプションのひとつ。これを使えば、バイトの交換は3秒で終わる。キリコを払う時間の方が長いくらいである。バイトは専用のホルダーにあらかじめセットしておく。刃高はホルダー上部のつまみの位置で調整され、ネジでロックされている。刃物の交換の際は、このホルダーをツールポストの溝に落とし込み、ハンドルを30度くらい回転させてロックするだけ。刃先は0.02mmくらいのくり返し精度で位置決めされるので、いったん別のバイトに持ちかえてから元にもどして、同じダイヤル送りで加工することもできる。写真では見えないが、ツールポストの向こう側にも同じような取り付け構造があり、中ぐりバイトなどはそちら側に付ける。このツールホルダーを使えば、旋盤作業の能率は飛躍的に向上する。ただし、とっても値段が高い。

(終)


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