1999年7月 「型板と当板の製作」
先月の設計に基づいて、型板を作製した。いずれも9mm厚の軟鋼から作製した。
これだけ厚いと切り出しも大変である。
最終加工をミニフライス盤でやることを考えると、なるだけ肉削ぎしておいた方が良いので、
金ノコとヤスリでおおまかな形に整形した。
続いてベースプレートを用意する。必要なのは150×150×10の鋼板だが、
平板の状態で精度が必要なので、機械加工済み軟鋼板(商品名スタープレート)を使用した。
これにハイトゲージで穴位置をケガき、ポンチを打ってミニフライス盤で穴を開ける。
穴開けにボール盤を使わなかったのは、ミニフライス盤の方が主軸の垂直度が良いから。
この板の穴の精度で型板の精度が決まるので、穴の位置、穴の垂直度には充分注意が必要である。
型板固定穴はM6のネジ穴だが、まずφ5.1の穴だけを開けておき、
この穴を、切り出した型板2枚に写し開けてからネジを切る。型板の穴はそのままφ6に拡大する。
回転テーブル中心はMT2の穴になっており、まずここに入れる軸を旋盤で削り出した。
フライス盤主軸との軸合わせを簡単にするため、先端に山形の突起を付けた。
さらに型板をベース板に固定するためのネジを作製した。
用意ができたところで、フライス盤に回転テーブルを付け、
1mmアルミ板を介して型板をネジ止めしたベースプレートを固定し、
円弧の加工を行う(写真)。
フライス盤の剛性が低いので、0.2mmずつチマチマ削った。
回転テーブルの目盛りで、回す角度の範囲を管理する。
断面を削ったら、そのままのセッティングでRカッターに持ち替えて、
角に1.5mmのRを付ける。
裾の直線部分は、X−Yテーブルで通常の切削をすればOKである。
なお、煙室管板用の型板は、単純な円形なので、普通に旋盤で加工するだけ。
下の写真左が、出来上がった型板3枚である(左から、内火室用、外火室用、煙室管板用)。
周囲に開いている余分な穴は、板金後に銅板をジャッキアップするためのM6ネジ穴。
写真右は、板金時に型板の反対側にあてがう当板。
こちらは15mm厚の桜の平木から、型板と同様の手順で作るが、
精度は不要なので、目測で削ればOK。型板よりやや小さめに作る。
右端の円盤は、バレルの丸めの時に作ったもので、ここで再利用する。
型板ができたので、やっとフランジプレートを作れる。
まず切り出しだが、フランジの分だけ型板より大きく切り取る必要がある。
この幅は、板の厚さ方向の中心線の長さを計算して求める。
(実際は、板が伸びてこれより広くなる)
糸ノコで切り出すのだが、切り取り線のほかに、糸ノコの刃の幅だけ外側に線をケガき、
2本のケガキ線の間を糸ノコで切断する(写真右)。
切断面は荒れていてもよいので、太めの刃を使って能率を上げる。
下の写真が、切り出したプレート。5枚もあるので、切り出しも大変だった。
【苦手のポンチ】
ケガキはハイトゲージを使えば誰でも正確にできるが、
ケガキ線の十字の交点に正確にポンチを打つには熟練が必要である。ケガキ線ははっきり描いたほうが、当然見やすい。
特に鋼材へのケガキ線は見づらいので、
青ニスを塗ってからケガくことにしている。ポンチは先端に超硬チップが付いているものが良い。
焼き入れポンチだと、しょっちゅう先端を研ぐハメになる。
(ポンチを研ぐのは意外に難しい)
オートポンチというのもあるが、使ったことがないのでよくわからない。ポンチの位置決めは肉眼でもできないことはないが、
私は、写真のようなヘッドルーペを愛用している。
ポンチ打ちのような両手がふさがる作業にはたいへん重宝する。
DIYで安く買ったもので、3倍のレンズが付いている。照明は重要で、向かって右横から強い光を当てる。
そうすると、ポンチの先端が、手の陰になることなく、よく見える。左右の位置は見ればわかるが、前後位置はあわせづらい。
そこで、ポンチの先端を横ケガキ線の溝に入れ、線にそって横に動かし、
縦線とクロスした位置(指先につっかかる感覚がある)で止める。これらはすべて左手でポンチを持って行い、
位置が決まったら、そのまま左手は動かさず、
あらかじめ右手に持っていたハンマーでガツンとやる。
この方法でかなり正確に打てるようになったが、
それでも10回に1回くらいは失敗して、穴がずれてしまう。
その時は、斜めに傾けて追加で打ち、むりやり修正する。
フランジ加工はまた来月ということで…