1999年9月 「外ボイラー」
***** 外火室板整形 *****
外火室板は缶胴から後に続く部分で、その断面は、外火室後板の形になる。
2.5mm厚の銅板を整形して作る。
現物合わせで裾を決めるので、両端に1mmずつ仕上げしろを取った状態で切り出す。
曲げる前にブッシュとサイドステイの位置をケガき、ポンチを打っておく。
中心線および曲げる位置もハイトゲージでケガいておく。
これをバーナーで焼きなまして、整形開始。
まず両脇のくびれの部分を曲げる(写真左)。
曲げる範囲の両端をそれぞれ2枚の平鋼ではさんで固定し、
片方の平鋼を机に固定し、もう片方の平鋼を手で持ち上げて曲げる。
ベニヤ板に紙を貼って所定の角度線を書いたものを目安にして、角度を合わせる。
続いて缶胴に続く丸い部分を曲げる(写真中)。
芯にする鉄パイプに重ねた紙を巻き、紙の枚数を調節して所定の径に曲げる。
すそに続く部分は手では曲げにくいので、鉄アングルをひっくり返して置き、
シャコ万で締め付けて曲げる(写真右)。
これに限らず、丸棒とアングルを組み合わせれば、
板を所定のRで所定の角度まで簡単に曲げることが出来る。
おおよその形になったら、桜の板から作った型板を作り
(また型板作製治具のお世話になった)、
これを入れて周囲を叩き、正確な形に整形する。
右の写真は、外火室後板を仮に入れて、隙間を確認しているところ。
以上のように書くと、いかにも簡単そうだが、
実際はあちらを叩けばこちらが曲がりといった具合で、
なかなか思うとおりの形になってくれない。
あせらず気長に調整するのが良い。
***** 外火室ブッシュ付け *****
ここで付けるのは、安全弁ブッシュ2個と蒸気箱ブッシュであり、いずれも外火室の稜線上に位置する。
ブッシュを入れる穴は、平板の状態で開ければ良さそうなものだが、
先に穴を開けてから板を曲げると、板の表と裏で穴の大きさが違ってくるので、
ヤスリでの修正が必要になり、隙間のできる原因になる。
穴の径は、オリジナル設計だとインチサイズで中途半端だったので、
1mm単位になるように設計変更し、安全弁用をφ13、蒸気箱用をφ11とした。
いずれもミニフライス盤では開けられない大きさなので、旋盤を用いて穴を開けた。
桜の型板を穴の裏に入れ、
中心に穴を開けた平鋼でバーティカルスライダーに押し付けて固定し、
主軸にセンターを入れて芯出しし、ドリルチャックに持ち替えて穴を開ける(写真)。
銅は柔らかすぎて加工が難しく、食い込みやすいので、
φ3からスタートして1mmずつ直径を増していき、最終の径に仕上げた。
これらの穴を頼りに、押し込み固さでブッシュを作製する。材料はφ15のリン青銅丸棒。
ブッシュには中心の穴は開けず、センタードリルでスタート穴を開けるに留めた。
理由は、銀ロウ付けでブッシュが傾いて付いてしまった場合、
穴も傾いてしまうからで(安全弁が傾くと非常に目立つ)、
銀ロウ付けの後に火室に垂直に穴を開ける方が安心だから。
ただしブッシュのシール面と穴との垂直度が重要になる箇所、
たとえばレギュレータブッシュなどにはこの手は使えない。
安全弁はネジ山をバスコークでシールするつもりなのでOK。
ブッシュを作製したら、外火室に挿入し、中から前後2カ所をポンチでカシメて固定する。
銀ロウ付けは、先月のスチームドームブッシュと同様、
ひっくり返して内側に銀ロウを置き、外から加熱する。
加熱でブッシュが抜け落ちないか心配だったが、問題なく付いてくれた。
ブッシュの垂直度も問題なく、これなら銀ロウ付け前に中心穴を開けておいても良かった。
***** 外ボイラーの組み立て *****
缶胴、外火室、ノド板が組み合わさって、外ボイラーとなる。
オリジナル設計だとノド板と缶胴はイモ付け
(直角に突き合わせて断面のみ接合)になっており、
強度的に不安があったので、
接合部に2.5mm厚の補強板を追加して断面積を稼いだ。
まずこの補強板を缶胴にリベット止めして銀ロウ付けし、
改めて旋盤で缶胴断面を出し直す。
続いて、缶胴と外火室板との接合のための帯板を、
缶胴側にリベット固定して銀ロウ付けしておく。
ここまでの状態が右の写真(向かって左が上)。
リベット穴位置を間違えたため、
帯板を前寄りに取り付けざるを得なくなった。
ここでノド板を缶胴へ仮固定する。
固定には、M2真鍮皿ビスを用いた(写真)。
ネジ穴は、缶胴と補強板の接合部(厚さ5mm)に
縦に掘って開けるが、貫通させてはいけない。
前回のように、銀ロウ付け中に蒸気で
ネジが打ち出されると困るので、
糸鋸でネジに縦に切れ目を入れ、空気抜きとした。
ここまで出来たら、整形した外火室を入れてみる。
全体を鉄パイプに入れ、隙間のある場所を
外からハンマーで叩いて密着させる。
だいたい密着したら、てっぺんから
φ1.6リベット穴を次々と開けて固定するが、
この段階ではリベットではなくM1.6ビスナットで固定する。
さて、これだけだと缶胴、ノド板、外火室の三者が合わさる部分に
隙間ができやすいので、ここに裏から小板を貼る。
この板は、すそを割って股を開かせ、
片足を缶胴に、もう片足をノド板に沿わせる。
ここも最初はビスナット固定とする。
全体が組み上がったら、再び隙間を確認し、
最終調整をしてから一旦分解し、
全部の部品を酸洗浄する。
そしてフラックスを塗ったリベットで組み立てていく。
参考書によると、リベットも漏れの原因になるので、
なるべく数を減らせとあるが、
これはあくまで部品が隙間なく調整できていることが前提である。
私としては、リベットから漏れたとしても修復は難しくないが、
隙間がある状態で銀ロウ付けしてしまうと修復が困難になるので、
多数のリベットでしっかり密着させる方が安心である。
その代わり、全てのリベット部分には裏表から銀ロウを流すことにした。
***** 銀ロウ付け *****
これだけ部品が多いと、一度の加熱で全ての接合部にロウを流すのは不可能で、
私の場合、結局6回もかかってしまった。その内訳は、
(1)前を下にして置き、前後をつなぐ帯板と、ノド板フランジ部分に銀ロウを流す
(2)上を下にして置き、缶胴とノド板の間に銀ロウを流す
(3)左を下にして置き、右側リベット群の外側と、左側リベット群の内側をコーキング
(4)右を下にして置き、右側リベット群の内側と、左側リベット群の外側をコーキング
(5)上記(4)で銀ロウが転がり落ちてコーキングできなかった部分を再び加熱
(6)前を下にして置き、全体的に銀ロウが不足している部分に銀ロウを追加で流す
私の場合、上に銀ロウを置いて下から加熱して銀ロウを流すという、
いわゆる「置き付け」でやっているので、こんなに回数がかかるが、
先に加工物を加熱して、銀ロウを押し付けて溶かすという方法だと、回数を減らすことができる。
私も最初これをやろうとしたが非常に難しく、あきらめた次第。
「置き付け」の場合、最初から一気に加熱すると、フラックス中の水分の蒸発の勢いで、
せっかくきれいに並べた銀ロウが吹き飛ばされてしまう。
最初に軽くあぶって、水分が飛んだところで、銀ロウの位置を確認し、
ピンセットなどで修正してから、再び着火して火力を上げる。
リベットのコーキングなどは、粉にした銀ロウをフラックスで練って、
あらかじめリベットに塗っておくという手もあるが、
銀ロウを粉にすり下ろすのが面倒である。
ボイラーは缶胴だけで1.5kg、外ボイラーまでで3kg、
ボイラー全体で6kg弱になる計算であり、
外ボイラーの接合には缶胴接合の2倍の熱量が必要である。
しかしここでも保温に気を使い、1回の銀ロウ付けは3分程度で終わった。
写真は(1)の銀ロウ付け時のセッティングである。
前面を除く三方向と上とを、耐火レンガで囲み、
加熱の必要のないボイラー前半部分は、
グラスウールで覆って保温した。
この状態で炎を斜め下から上に向けて放射し、
ボイラー全体を炎で包み込むようにして加熱したら、
3分ほどで赤熱にまで至った。
このセッティングでは銀ロウが見えないが、BAG-1銀ロウは銅が鈍赤色になると溶けるので、
赤熱まで加熱すれば間違いなく溶けて流れる。
右の写真は酸洗浄しているところだが、
入れ物はホームセンターで売っている
ポリプロピレン製の米ビツである。
長細いので、ボイラーがきれいに収まり、
硫酸の量も最小限で済む。
やっとボイラーの外観が姿を現した。全長は約35cm、缶胴の直径は約10cm
【鋳物のゆくえ】
ところでREEVESの鋳物の不足分だが、最後の督促状を出してからすでに3ヶ月が経過している。
ファックスで再び問い合わせたところ、わずかずつながら不足分は揃ってきているようだが、
まだ肝心の動輪とシリンダーブロックが上がってこないらしい。
今回はついに「納期は保証できない」とまで書かれている。
もう、怒る気力もないが、
どうせ今のペースだと、動輪に取りかかるのは来年以降になるので、
気長に待つことにする。
いざとなれば、自分で木型を作って...
設計図は刷れたらしいので、とりあえず先に送ってもらった。
今まで参考書のコピー図面を頼りに作ってきたが、
もともと寸法が記入されてない箇所がけっこう多いので、大型の図面は頼りになる。
(ただし原寸大ではなく、原寸より大きかった)
私の狭い工作室では広げられないのが難点だが。
REEVESのカタログを見ると、鋳物の種類が無数に(動輪だけで100種類以上!)あるが、
いかにライブスチームの盛んな英国とはいえ、そんなに需要があるとは思えない。
やはり日本の鉄道模型メーカーと同様、カタログはあるが現物はないというのが実状なのだろう。
これから始める人は、在庫を確認した上で機種選定する方が無難だろう。