2016年9月 「ドレン弁(1)」
国鉄蒸機のドレン弁は通常、左右に3本ずつある。それぞれ両端の2本はシリンダーの内部に貫通しているが、中央の1本は、ピストン弁の蒸気室(中央部)に接続されている。C53の場合は、これに加えて内側シリンダーの両端(実際は内側蒸気室の両端)にも接続されていて、左右で4本ずつ、合計8本のドレン弁がある。内側蒸気室の中央部は、右蒸気室と直結されているので、ドレン弁は省略されている。模型をどうするかだが、シリンダー両端のドレン弁は必要であり、一部を機能させて一部をダミーにするのもややこしいので、8本全部機能させることにした。
ドレン弁の断面図を示す。左がシリンダー両端部のドレン弁、右が気筒中央部のドレン弁である。構造は、実機と同様に、コイルバネで押し付けられた弁を、開閉棒で押し上げて開くようになっている。弁には球弁を用いる。コイルバネを保持するキャップには、ドレンが通る穴が開いており、シリンダー両端部については、その上の穴がシリンダー内部に貫通している。中央部については、穴は貫通しておらず、代わりにドレン弁の根元から銅管が分岐している。シリンダーブロックとロックナットに挟まれたリング状の部品に、銅管が接続されている。なお、図の水色の部分がシリンダーブロック本体であり、灰色の部分がシリンダー覆いである。シリンダー直径が実機より小さいので、両者には隙間があり、銅管はその間に隠れるので、外からは見えない。
まず、シリンダーブロックに、ドレン弁を取り付けるための加工をする。中央寄りの穴は、リング部品を着座させるため、エンドミルで座繰りを入れた。エンドミル刃先には逃げ角があり、完全な平面ではなく中央部が盛り上がるので注意が必要。対策として、リングの接触面をテーパーに加工して密着させた。
片側4本のドレン弁は、1本のスライドバーでいっせいに駆動されるので、4本の高さが揃っていなければならない。ネジの位相は制御できないので、旋盤加工まで済んだ時点で、シリンダーブロックにねじ込み、高さを揃えて方向を決め、残りの加工(スライドバー用の横穴など)を行った。
写真は中央寄りのドレン弁の部品である。コイルバネと球弁は、シリンダー安全弁に用いたものと全く同じ。ドレン弁本体には2個のクロス穴が開いている。ねじ部の穴がドレン入口で、六角部の穴がドレン出口。前者は貫通穴で後者は止まり穴である。銅管が銀ロウ付けされたリングには、中えぐりで蒸気通路が形成されている。
写真はシリンダーブロックを反転したところ。ドレン弁と各蒸気室は、3ミリの銅管で接続される。
外側蒸気室中央への接続箇所。ドレン弁からの配管は、シリンダーの内側をまわり、シリンダーと蒸気室の間の窓から外に出て、蒸気室に接続される。蒸気室側も、リング状の部品で接続した。
内側蒸気室両端への接続は、まずシリンダーブロックにニップルをねじ込み、銅管とニップルをユニオン継手で接続した。
ドレン弁が8本もあるので、工作がなかなか進まない。駆動系の工作は、次回紹介する。