目次 / 前月 / 次月
2024年9月 「砂箱(1)」
C53の砂箱は、ボイラーの左右に、ランボードを貫通する形で設置されている。限られたスペースを有効活用するため、縦にも横にも曲線を取り入れた特殊な形状をしており、作るのはなかなか大変である。側面図(右)で上下にアングルが付いているが、上のアングルは砂箱を砂箱受に取り付けるためのもので、下のアングルはその砂箱でランボードを支えるためのもの。
ライブスチームにおいて、スケール通りの砂箱はまともに機能しないが、せっかくの入れ物なので、中央ロッドを含む可動部分に自然滴下で注油するためのオイルタンクとして使用することにした。
まず前板、後板、天板を用意する。いずれも1.2mmの真鍮板で作った。設計の形状に糸鋸で切り出し、前板、後板については、以下に紹介する方法で曲げた。
所定のRに曲げるため、アングルと丸棒を組み合わせた治具を用意した。材料を挟んでボルトで締め付けて曲げる。前板はS字に曲げ、後板はL字に曲げるが、それぞれRが異なるので、二種類の丸棒を用意した。
アングルを用いた治具では、直角までしか曲げられないが、リリースするとスプリングバックにより鈍角に仕上がってしまう。写真のように万力とフラットバーで直線部を保持し、フリーハンドで直角まで曲げを追加した。
曲げた板に、組み立てに必要な穴を開ける。
3枚の板を真鍮アングルで組み上げ、外側板をおおまかに切ってその上に置き、形状をケガキ針でトレースする。この後に外側板を糸鋸で切り出し、真鍮アングルで取り付ける。
内側板は、切り出す前に前後板の断面形状に曲げる。微調整が必要なため、ここだけ0.5mm板を用いた。
トレースする前にアングルで前後板に取り付け、完全に密着した状態でトレースする。
トレースに沿って糸鋸で切り出すが、曲面なのでクランプするのが難しい。写真は切断途中の状態。
天板に糸鋸で丸穴を抜き、真鍮管から作ったリングを差し込む。リングには、高さ決めのための段差加工を施している。
こちらは、ボイラー覆いに取り付けられた砂箱受である。5月に報告済み。
砂箱に上のアングルを取り付け、砂箱受に載せて、固定穴を移し開ける。同時にランボードを乗せ、ランボード支え用アングルの位置を決める。
分解して、下アングル固定用の穴を開けているところ。
砂箱をオイルタンクとして使用するため、全ての継ぎ目を高温ハンダでコーキングする。ただし天板だけは取り外し式とした。コーキング後に水を張って、水漏れがないことを確認した。
最後に、砂箱の下部前方に、砂撒き栓を取り付けるためのネジ穴を開ける。砂撒き栓は左右で各3個あり、それぞれフランジをビス4本で固定する。中央の穴は油を通すためのものである。
ここまで工作を実施した時点で、これはC53の後期型の砂箱であり、プロトタイプとして考えている前期型の砂箱はもっと縦長であることがわかった。前期型はその後に後期型のような短縮タイプに改造されているが、後端下部がアールではなく斜めに切り取られた形状となっている。作り直すのは大変なので、改造を試みるが、今回はここまでとする。
目次 / 前月 / 次月