2011年7月 「動輪組み立て」
前後の車軸にはエキセントリック(偏心輪)が取り付けられる。前車軸には軸動給水ポンプ用が1個、後車軸にはスチブンソン式バルブギア用が4個である。駆動部の直径は、前者が45mmで後者が40mm。偏心量は、前者が10mmで後者が8mmである。材料は砲金が好ましいが、加工性とコスト優先で真鍮を使用した。それぞれ50mmと45mmの真鍮丸棒から作った。
バルブギア用は、片側だけフランジがある形状で、通常に段差加工して突っ切り、四爪で偏心チャックして軸穴を開ける。写真は、センターファインダーで偏心チャックの心出しをしているところ。
軸動給水ポンプ用は、両側にフランジがある形状で、摺動部は突っ切りバイトで仕上げる。
それぞれセットビスを使って車軸に固定する。バルブギア用は、バルブギアを組み立てた状態で位相の調整ができるように、フランジ部にセットビス穴を設けた。このためフランジ厚さが必要以上に厚くなっている。最終的にはテーパーピンで永久固定するつもりである。
続いて、車軸の端部に取り付けるクランクを加工する。材料は12mmのレーザー加工品である。ここにサイドロッドとメインロッドが取り付けられる。車軸からクランクピンまでの距離は、ぴったり一致していなければならない。まず中繰りで車軸を通す穴を仕上げ、最初の1個だけクランクピン穴を開け、残りはそこから移し開けた。3度も移し開けたので最初のクランクピン穴がわずかに拡大してしまった。ズボラをしないで穴開け治具を作ることをお勧めする。
クランクの裏面に段差加工をする。余計な部分が軸箱にこすれないようにするためだが、設計上、クランクは軸箱と絶対に接触しないことがわかり、あまり意味のない加工となった。この後、10mmのS45C丸棒から作ったクランクピンを接着する。
ここで車輪を組み上げるため、動輪、軸箱、クランクの塗装を行った。使用したのは、たまたま手元にあった艶消し黒の耐熱スプレーである。動輪は表の輪心部分のみ、軸箱は摺動面を除く部分、クランクはとりあえず裏面のみ塗装する。アセトンで脱脂して簡単にマスキングを施し、二度に分けて塗装した。マスキングを取ってはみ出し部分を綿棒でふき取る。その後、遠赤外ヒーターで1時間、焼き付けた。
ロックタイト(648)で、動輪を車軸に接着する。動輪の穴と車軸をアセトンで脱脂し、軸側に接着剤を塗って、動輪を回しながら入れる。片側ずつ接着し、それぞれ24時間養生した。
軸箱とクランクを入れ、旋盤を利用してクォータリングを実施。両センターで保持し、主軸側の台にクランクピンを載せて水平とし、心押し側はピンを真下に向けて、テーブルに固定したブロックをストッパーとして角度を決め、クランクをセットビスで締め付ける。位相は、進行方向右側が、左側より90度前進した位置となる。
仮止めしたクランクを、3mmのテーパーピンで固定する。ドリルで下穴を貫通させ、テーパーピンリーマに持ち替えて、低速で穴を拡大し、ピンを打ち込む。テーパーピンリーマーによる加工は、機械でやれば何も難しいことはない。むしろドリルで細い下穴を真っ直ぐに開ける方が難しい。
組み立てが終わった動輪。クランクの表面は、ボディーと同じ色に塗る予定。サイドロッド、メインロッドも同じ色に塗られる。ボディーの色は今のところ赤を予定している。そして煙室、ランボード、主台枠は黒である。