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2016年6月 「灰箱その他」
台湾から帰ってきたものの、なかなか工作を再開できなかったが、この4月に川崎市に転居し、ようやく工作室を手に入れた。諸般の事情で二階になり、搬出・搬入で苦労しそうだが、場所があるだけましである。実家に保管していた工作機械、材料、車輛をすべて戻した。2トントラック1台を手配し、普通の引越しと同じくらいの費用がかかった。
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約6畳のスペースに工作室をセットアップ。いつものように、床はウッドカーペットで養生した。さらに壁には今回、防炎シートを貼ってみた。
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窓には換気扇を設置した。部屋で塗装をやる際は必須である。さらに、材料切断時の粉塵対策も兼ねている。
まずは、サドルタンクの配管から工作開始。サドルタンクは左右一体型のタンクだが、水位が下がると左右に分かれてサイドタンクと同じ状態になる。従って左右の底を接続しておかないと、水の減り方がアンバランスになってしまう。タンク左右底から太いパイプを下げてボイラーの下で接続することにした。さらにそこから配管をキャブまで引っ張って水面計に接続する。さらに後方に延長して後端梁に出し、タンクの排水プラグを設置する。
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強度を考えて、パイプには10mmの真鍮管を使用した。組み立てには銅製のエルボーとティーを使用する。「カクダイ」というメーカーのものである。設計通りに配管を切って、直角平行を合わせて、銀ろう付けで組み立てる。
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エルボーが直角よりわずかに鋭角になっていたが、接続後に手で矯正した。写真の右方向が、機関車前方となる。
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組み上がったものを、本体に取り付ける。組み込むために、台枠の中間梁を1個外す必要があった。写真は、ボイラーなしでサドルタンクとキャブを取り付けた状態。後方の、上に分岐した先が、アクリルパイプ製の水面計に接続されている(右端)。ここに、サドルタンクの水位が取り出される。
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ハンスレットは、ボイラーの安全弁がキャブ内にあり、弁に煙突が付いていて、蒸気は屋根の上に排出される。模型でも同じ構造とする。煙突はアルミパイプを使用する。まず、屋根に煙突を通す穴を開ける。ホールソーを使用した。
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真鍮丸棒で安全弁に取り付ける口金を作り、アルミパイプはそこに差し込むだけにした。蒸気上げの際は、安全弁の動作を確認してからパイプを差す。ドレンを抜くために、真鍮口金の底には、横穴を開けている。
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火格子と灰箱は一体構造にした。火格子部分は、10×3mmのSUS304平鋼を切り出して、M4全ねじで組み上げたもの。ワッシャを重ねてスペーサーとした。格子のギャップは約4.5mmである。全体を灰箱下部から保持する構造として、同じ材料で支柱も作った。写真は、ひっくり返した状態。下のねじ棒2本が灰箱の妻板を貫通して固定される。ネジが緩んで火格子が横にずれないように、斜めの梁を1本入れた。
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灰箱は、1ミリ厚のSUS304板から作った。四角形の周囲をアングルで組み、底板は蝶番で下に開くようにした。蝶番は市販のステンレス製のものをそのまま使用した。この写真も、ひっくり返した状態。灰箱は主台枠の横からピンを貫通させて保持される。ピンのガイドとなるパイプを灰箱に銀ロウ付けした。WILLIAMと同じ構造である
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SUS304は加工性が悪いので、糸ノコで切り出していたらラチが開かない。今回、通常より目の細かい帯ノコ刃を手配した。ハイス製・1インチ32山で、1ミリのステンレス板もこれで楽に切れる。
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ピンは8mm丸棒に、それらしいヘッドを銀ロウ付けして作った。SUS303製である。WILLIAMの時はネジ式としたが、今回は丸棒で済ませた。
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火室下部に取り付け、スプリングとワイヤーで底板を引いて閉める。灰を捨てる時は、火掻き棒などで底板の後端を上から押すと底板が開いて灰が捨てられる。運転終了時は、スプリングを外し、ピンを引き抜くと、灰箱が火格子ごと下に落ちる。
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ネームプレートとメーカーズプレートは、モデラで製作した。材料は1mmの真鍮板で、電気炉で焼鈍(500度30分)したが、効果のほどは不明である。1mmのエンドミルを用いて、深さ0.03mmずつで0.1mmまで加工した。
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メーカーズプレートは文字が小さいので、部分的に、先端0.2mmの円錐型カッターも用いた。じつはその前に0.3mmのエンドミルでトライしたのたが、さすがに細すぎてあっさり折れてしまった。何種類もツールを手配したので、エッチングを外注するより高くついてしまった。
長いブランクだったが、いざ工作を再開すると、機械の操作などもすぐに思い出すことができた。長年やっていると、体がしっかり覚えているものである。
これで、すべての部品の製作が終了した。あとは塗装と組み立てを残すのみ。
台湾で作ったアダチC53(16番)の続編として、19年前のアダチC51仕掛品を完成させた。基本的にはキットの素組みで、空気作用管のみ追加している。これにて、小型模型製作は打ち止めとなるだろう。
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