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2012年8月 「キャブ」



キャブ(運転室)の前板と側板は、1.5mm鋼板のレーザー加工品を使用した。9.5mmの真鍮アングルで組み立てる。アングルはそのままだと直角精度が悪く、組み立てに影響するので、エンドミルの正面削りで矯正した。上面と側面の固定穴位置が微妙にずれている点に注意。組み立て時にネジ頭が干渉しないように、わざとずらしている。



キャブの前窓は、実機にならって回転構造にした。ここだけは作りたかった部分で、この機関車の唯一のディテール工作といえる。以下、製作方法を示す。



窓枠は、1.5mmの真鍮板を重ね合わせたものとし、間にアクリル板を挟む。まず糸鋸で中央に穴を開けた矩形板を4枚用意し、面板に取り付けて丸穴を旋削で仕上げた。丸穴の内周には、アクリル板を挟むための段差加工をする。アクリル板が1.5mmなので、段差は表裏それぞれ0.75mmずつにした。4枚まとめて貫通穴を仕上げ、1枚ずつ抜きながら、次々と段差加工をした。



続いて外周の余剰部分を鋸で切り落とし、ヤトイで内周をまとめて保持して、外周を旋削で仕上げる。三爪チャック側のヤトイには窓枠の内径と同じ径の段差加工をしており、そこで芯出しされる。外側のヤトイは単なる円盤で、中央のボルト1本で加工物を締め付けている。これも4枚まとめて加工。



2枚一組で周囲8箇所に固定穴を開ける。ネジサイズはM2で、片側をネジ穴とした。さらに表裏の窓枠の境界を中心として、回転ピンを入れる止まり穴を開ける。穴は表裏それぞれ半円ずつとなる。アクリル板は糸鋸で丸く切り出して周囲をヤスリで仕上げた。



回転ピンには、1.6mmのバネ用ステンレス線を使用した。キャブ前板の窓の切抜きの上下に、ピンを収める切り欠きを入れ、前後から真鍮小板(幅4.8mmのボイラバンドを利用)で挟んで固定する。



窓の回転を180度以内に制限するため、キャブの内側に、鋼帯板のストッパーを取り付けた。ストッパーは前板の丸穴にわずかに浸入しており、窓枠がここに当たって回転を制限する。



窓枠が前板の切り欠きに接することなく、スムーズに回転するように、回転ピンの長さをヤスリで調整する。



屋根は、1.5mmの真鍮板を曲げロールで曲げて作った。これも真鍮アングルで取り付けるが、アールになっている前端部分は短く切ったアングルを使用した。側面部分は側板と直角ではなく傾斜を付けて接続されるので、アングル材のネジ止め部分のみ曲げて取り付けた。屋根後端はポールで支えられる。



ポールの上端には小板を銀ロウ付けして、その板を屋根に取り付けた。写真ではわかりにくいが、小板はポールに対して斜めに取り付けられている。ポールの下端は、中心にネジ穴を開け、ランボード固定アングルの下からボルトで固定する。



キャブ前板には汽笛が取り付けられる。使用したのはOS製の汽笛だが、そのままでは本体を固定することができない。配管接続部分を自作の真鍮部品で延長し、その部品をキャブ前板に取り付けられる構造にした。



汽笛を取り付けた状態。下部の配管接続部のみで保持している。



キャブ内の汽笛弁から汽笛までを配管接続する。安全弁の左側に配管をまわしたのは、右側の注水プラグを外しやすくするためである。



完成まであとサドルタンク配管と灰箱、そして塗装を残すのみである。あと3ヶ月もあれば完成するのだが、残念ながらこの状態で海外転勤のため工作休止となる。





例によって運搬ケースをヤザキのイレクターで組み、ロコを収納した。大きさの比較のため、ウイリアム、C53と3台並べて置いてみた。長さはC53に負けているが、幅と高さはハンスレットの方が大きい。スケールがC53の約2倍なので当然である。



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