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2012年12月 「工房探訪」
今回は予告どおり、游さんの工房の紹介をしたい。とにかく驚異的な内容であることは、写真を見ただけでもお分かりいただけるであろう。
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工房はアパートの地下に設置されている。床の間と土間に分かれていて、床の間は模型の展示と整備台、土間には工作機械が置かれている。
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壁の陳列棚に大量のHOゲージ車輌が展示されていた。日本型が多い。仕切りにトンネルを開けて長編成の列車をそのまま展示している。一部の線路にはパワーパックも接続されていて、短距離だが走行も可能。
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こちらは1番ゲージのコレクション。これも大量にあった。アスターホビー製が多い。日本のオークションで手に入れたものが多いらしい。
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動輪舎のC56を発見。游さんはこの他にOSのシェイも所有されている。D51が完成してから、これらは単なる展示品になったらしい。
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これまた可愛らしい5インチの凸電。自作品である。
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イベントに使用する大量のトレーラーは、天井の空間をうまく利用して保管されていた。
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土間に設置された旋盤。工作機械の駆動は220Vらしい。これ以外に、サカイのミニ旋盤もあった。
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こちらはフライス盤。かなり大型である。巨大なバイスが取り付けられていた。脇にはボール盤も見える。
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こちらは大小のプレス機。游さんの工法は、プレスを多用している点が特徴である。加工の経験があり、さらに金型設計のノウハウを持っている。プレスは危険な作業なので注意したほうがよいと。
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2輌のD51は、床の間に置かれていた。下が常時運用に使用しているもの。上はまだ数回運転しただけらしい。最初はD51仕様だったが、これも台湾仕様に変更されている。常に綺麗に掃除されて、普段はホコリよけの透明カバーが掛けられている。
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上の棚は床の間と土間の仕切りだが、この高さで部屋を一周しており、元々はHOゲージのエンドレス・レイアウトを製作する予定だったらしい。ライブに傾倒して、作業台に変わったらしい。
以下、D51のディテール写真である。
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バネも端正に作られている。バネ本体はバネ用鋼材を切り出してプレスで曲げたもの。板厚1.2mmだと長時間の運用でヘタリが見られ、1.5mmに変更したと。ポケットは、帯板をプレスで四角く曲げて溶接したもの。とにかく工法が本格的である。
こちらはパーツボックス。ネジ類のみならず、ロストワックス部品や機械加工品が大量に保管されていた。安全弁だけでご覧のストックがある。おみやげに4個もいただいた。
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大量にあるのは外注によるもので、メーカー品などを参考に自ら設計し、地元の業者に外注に出すらしい。日本製を買うより、桁違いに安いコストでできるらしい。それにしても、これだけの数量だと費用がかさむのが悩みの種だとか。
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こちらはロストワックスおよび機械加工のパーツ群。鋳物では細かい形状の表現ができないということで、游さんはロストワックスを多用している。一度の外注ではなかなか気に入るものができず、試作を繰り返すらしい。
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たとえば、左はバネ釣受け。真鍮および鉄のロストワックス品。右の汽笛本体は、ロストワックスと機械加工の試作品である。
ご覧の軸箱も、ロストワックスの一体整形品である。右は、そのワックス型を取るための金型。入り組んだ部分を形成するため、非常にややこしい組み合わせ構造になっている。金型は自身で設計して外注に出す。場合によっては自分で加工もする。これはもうメーカーの領域である。
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D51用の動輪。左の1枚が鋳物で、右の2枚が加工品。鋳物のストックも山ほどあった。
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こちらはトレーラー用の動力ユニットで、すべて自身の設計。ギアまで特注している。モーターと駆動方式をいろいろ試し、最終的にこの構造になったらしい。非常にパワーがあり、ユニット1個で乗客10人くらい引けるらしい。
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部屋の隅でボイラーを発見。游さんの使用するボイラーはすべてステンレス製で、耐食性・強度・重量・作り易さのバランスから考えて、ステンレスがベストだと。
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これはライブサイズのシェイのエンジンである。製作者は游さんではなく、台湾の先輩モデル・エンジニアの人だとか。
以下は游さんのコレクションから。まずは、カツミのシュパーブラインのD51キットである。私が小学生の頃、憧れの的だった。こういうものは作ると値打ちがなくなるとのことで、コレクター心理は、日本も台湾も同じ。
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こちらは、珊瑚のD51を台湾仕様で仕上げたモデル。台湾の模型メーカーの手による限定品らしい。
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カツミ製のシェイ。キャブ内部にモーターがあり、ちゃんとユニバーサルジョイントで駆動する。
こういった感じで、日本人でもここまでやる人は少ないだろう。やはりこの人は只者ではない。台湾で本格的なモデル・エンジニアに出会えた幸運に感謝したい。C53製作でも、いろいろとお世話になりそう。
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