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2022年12月 「灰箱(1)」
灰箱は、従台車の中に入り込むような特殊な形をしており、模型でもこれを再現する。灰箱は、ボイラーの火室を除くと、機関車の中で最も高温になる部分であり、ステンレス製とする。本体は0.8mmのSUS304板を使用し、底の蓋の部分は1.5mmの板を用いた。実物の灰箱はボイラーの火室に取り付けられるが、模型では後台枠に取り付けるように変更した。火格子も、灰箱の一部品として取り付けるように設計した。灰箱の上部に、火格子を後方から入れるためのレールを設置し、定位置まで押し込まれた火格子は、後端がリフトアップされて火室内に収まる。
ステンレスは糸鋸で切り出すのが大変であり、大型の不定形の部品はレーザ加工を依頼した。
今回、固いステンレスを線で折り曲げるにあたって、写真のようなメタルベンダーを手配した。長さ30cmまでのものを、鋭角まで曲げることができる。ステンレス板の曲げ能力が厚さ0.8mmまでであり、これで材料の厚さが決まった。
底板はアールを取って曲げるので、写真のように直線部分を平鋼で挟んで間を曲げた。平鋼の端部で急激に曲がらないように、力の入れ方に注意が必要である。
側板と底板は、ステンレスのアングルを介して、ビス・ナットで組み立てる。
先に側板と底板に穴を開け、アングルに穴を移し開けながら組み上げていく。
灰箱上部の左右に、別のステンレス板を折り曲げて作った、横戸4個を取り付ける。
こちらは火格子を滑らせるためのレール。厚さ1mmのステンレスアングルで、短い2本は補強用である。
上向きの本レールと、下向きの補強レールを、1.6mmの鉄リベットで固定していく。レール上面は皿穴として、裏からリベットと入れて表は皿穴に叩き込み、ツライチとする。リベットの力が弱いので、数で強度を稼いだ。
灰箱にレールを取り付けた状態。レールは灰箱後方に長く伸びており、後方から火格子を入れやすくしている。
レール前後の固定はこのようになっている。前は補助レールの間にステンレス丸棒が入っており、この丸棒が灰箱に固定されている。後部は補助レールが直接アングルで灰箱に固定されている。
鋼帯板を穴開け、折り曲げ加工をして、底蓋開閉リンクのブラケット類を作る。端部のアールを削るのに、小型模型で用いられるローラー法を使ってヤスリで仕上げた。アールの外径と等しいローラーで挟み、ローラーが自由に回転する状態でヤスリで削り込んでいけば、ローラーを削ることなく加工物だけをローラーの外径まで削ることができる。
L型のレバーは、端部を削る際にヤスリを大きく動かすことができないので、ここだけロータリーテーブルで加工して仕上げた。
底蓋のヒンジには、市販のステンレス蝶番をそのまま使用した。
底蓋の開閉状態を示す。写真右向きが機関車前方となる。上の押し棒を押すと、L型のアームが回転し、前の底蓋が下に押されて開く。前後の蓋はリンクで連動していて、前が開くと後ろも同時に開く。実物の灰箱もほぼ同じ構造である。
押し棒の根元とガイドの間にコイルスプリングを入れて、押し棒を引き、底蓋を常時閉とする。コイルスプリングはいつものように旋盤で巻いた。材料は、0.7mmのステンレス鋼線。
スプリングの設計にあたっては、写真のように実際に作用棒を引く力を測定して強さを決めた。想定される灰の重さが蓋に掛かっても、蓋が開かないように、バネの強さを決めた。
完成した灰箱を上下から見ると、このようになる。後台枠への取り付けと、火格子の搭載は、次回報告する。
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