目次 / 前月 / 次月

2025年2月 「フロントデッキ(2)」



点検蓋の埋め込みステップを作製する。まず埋め込み部の左右と奥の内壁を、真鍮板の一体成型で作製する。写真は、切り出した真鍮板と、その成型後の状態である。中央部の下の出っ張りは、床板を固定するためのもの。以下、成型方法を示す。



まず左右の三角部分を先に曲げるが、写真のような曲げ治具を使用した。曲げ能力は小さいが、小物の曲げ加工に便利である。続いて中央部を曲げるが、ここは治具が入らないので、写真のようなセットアップで万力で曲げた。




ステップの底板は網目板を使用する。底板の後端はさきほどの側板に取り付け、前端は点検蓋に直接固定するため真鍮製の鈍角アングルを取り付けた。



点検蓋に仮止めした状態。固定は下のネジ2本のみで、裏から表にねじ込んでいる。



全ての継ぎ目にハンダを流して永久固定し、下の固定ネジの先端をヤスリで削り取って痕跡を消す。先月準備した、ロストワックスの取手を取り付けて、点検蓋が完成。



実機の煙室戸の下には、灰除けの樋が設置されている。改造によるもので、構造的に無理があるのだが、模型でも灰除けに有効なので、設置することにした。さらに煙室左右のランボードとの隙間もこれで塞ぐ。1mmの真鍮板で写真のような樋を作製した。中央部を切り抜く前に、折曲機で先端を曲げている。



樋を取り付けるため、煙室前板下部を、面取りカッターで斜めに削り、さらに樋固定用のネジ穴を開けた。




フロントデッキを下回りに仮止めする。フロントデッキ後端の鈍角アングルは、煙室底とランボードにネジ止めされている。煙室前の樋は、実機では車幅全体に及んでいるが、見栄えが悪いので、模型では煙室範囲のみとした。もう少し手前に出したいところだが、これ以上出すと、点検蓋が開かなくなってしまう。



フロントデッキの左右下部には昇降ステップが付く。材料はレーザー加工で準備した。写真は片側分を示す。



柱材料にタップを立てる。いつものように、全ての部品の固定穴はフライスステージの座標管理で開け、「移し開け」は一切行っていない。



ステップの曲げを実施。左右のアール部分は、平鋼の角にRカッターでアールを付けたものを金型として曲げた。柱への取り付け部分には、固定用の穴を開ける。




ステップを支柱に取り付けて完成。フロントデッキに固定するため、上と前に真鍮アングルを取り付けている。



フロントデッキの左右前端にはポールが付くが、ポールは棒部分がテーパーで、先端が球形状になっており、加工が難しい。以下、加工手順を示す。



ポールの全長が110mmもあり、旋盤のトップスライダーの可動範囲を越えているため、トップスライダー角度調整によるテーパー削りができない。今までやったことがなかったが、心押しをオフセットさせて両センター支持で加工する方法を試みた。


マイフォードの心押し台は左右にオフセットさせる機能が付いている。ダイヤルゲージを用いて必要量をオフセットさせる。写真右はオフセットさせたセンターを主軸センターと突き合せたところ。これで丸棒を両センター支持すると、主軸に対して常に一定方向に傾いた状態で回転するので、それをベッドと平行に削ると、テーパーに仕上がるという理屈である。




ポールの材料は、在庫の都合でSUS303を使用した。必要量より長めに切り出して両端にセンター穴を掘り、両センター支持で側面削りをする。材料が長細いため、中央部分でバイトが逃げやすい。シャープなバイトで何度もスイープして仕上げ、最後はヤスリレースで微調整した。



先端の球部分は、左右に分けてそれぞれ細かいステップを加工し、ヤスリで仕上げた。




両端を切り落とし、根元は端面を仕上げてネジ穴を開け、先端は球部分の頂部をヤスリとサンドペーパーで仕上げた。



デッキに取り付けるベース部分は、ロータリーテーブルで加工して仕上げた。これをポール本体に皿ビスで仮固定し、銀ロウ付けで接合した。



最後に、ベース部分をポールと正確に垂直にするため、旋盤で固定面の矯正を行った。テーパーの本体部分は、細い部分に真鍮薄板を巻き付け、三爪チャックで均等に締まるようにした。



ここまでの部品を下まわりに取り付けた状態。ようやくC53らしくなってきた。


目次 / 前月 / 次月