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2025年5月 「ブレーキ弁(2)」


ブレーキ弁ハンドルを作製するにあたり、根元の部分は形状が複雑なので、ロストワックスで用意することにした。モデラでワックスの両面加工をして、ワックス型を作製し、鋳造を依頼した。




完成したロストワックス部品。これに必要な穴を開け、角穴は精密角ヤスリで仕上げる。



ハンドルのコック部分は真鍮丸棒をテーパー加工して仕上げる。先端側をチャックし、根元側を心押しして加工した。



コックの先端のアールは、いつものようにステップ加工後にヤスリで仕上げた。



ロストパーツとハンドルコックを銀ロウ付けしてハンドルが完成。



ハンドル内部に仕込むプランジャーを押すスプリングは極小のものであり、1.7mmのドリルのシャンク部分を芯にして0.3mmのバネ線を巻いた。ドリルを三爪チャックするために真鍮でコレットを作るが、バネ線の先端を入れて回り止めとするための穴も開ける。




ハンドル軸の先端は、ハンドルの角穴に合わせて四角に加工する。角棒のスリーブを用いて90度を割り出し、エンドミルで加工した。ちなみにバイスの移動ジョーには横方向のV溝が切られており、丸棒を常に一定の高さでチャックできるので、エンドミルの高さ固定のまま四面を削り出すことができる。



ハンドルまわりの部品一式。ハンドル軸にリン青銅製の偏心カムが取り付けられるが、軸の根元に平面部が切られており、リリース弁の押し棒を兼ねたロックネジで固定される。



ブレーキシリンダーにはドレン弁(左)と注油弁(上)を付ける。ドレン弁は球弁をスプリングで押し上げた構造で、0.1MPa以下の圧力では開となり、制動初期の復水を排出し、0.1MPaを超えると弁が閉じて、シリンダーに蒸気を送り込む。注油弁はスニフチングバルブと同じ構造であり、シリンダーが大気圧の時は弁が開いて、滴下した油がシリンダー内に入り、制動時に加圧されると閉じる。油は砂箱から送り込まれるが、中央ロッドの潤滑と同様に、運転開始時のみ注油する。



ドレン弁を構成する部品を示す。ここで使用するスプリングも、プランジャー用と同様に極小のものである。



注油弁の底は、球弁の周囲に油を通さなければならないので、円周上に4つ穴を並べて通路とした。



注油弁の部品一式。鋼球が上の弁座に固着することを防ぐため、ドレン弁よりも大きい(重い)鋼球を使用した。



ドレン弁と注油弁をシリンダーに取り付けた状態。最終的にはすべて黒く塗装する予定である。



ブレーキ弁からの配管は、火室側面に貼り付いた状態で設置する。配管を通すため、アルミの支柱裏面に切り込みを入れた。




ブレーキ弁を蒸気箱ごと外し、ブレーキシリンダーを接続してエアテストをした。ハンドルの回転角に応じて圧力が上昇し、約0.1MPaでドレン弁が閉じ、その後、罐圧までリニアに圧力上昇することが分かった。蒸気だと復水があるのでこのようにきれいに動作はしないだろうが、実用上問題はないだろう。


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